開智中学校は、選べる四つのコースで知られている中高一貫の共学校です。この記事では開智中学校を目指す家庭に向けて、出題傾向と勉強法を紹介します。
そもそも開智中学校ってどんな学校?
開智中学校は、探究型の学びを大切にし、専門分野で活躍できるリーダーを育成する学校です。グローバル社会に通じる英語学習や、最新の機器を使いこなしICTを活用する環境作りに注力しています。
入学するにあたって、四つのコースから自分に合ったものを選択できるのも開智中学校の特徴です。東大、京大、一ツ橋、早稲田、慶應などを進学希望する人のための「先端ITコース」、医師・薬剤師・獣医師を目指す人のための「先端MDコース」、まだ将来を決めかねている人に向けての「先端FDコース」、グローバルな仕事、未来の仕事、AIやロボット、新しい社会で挑戦する人向けの「先端GBコース」の四つが用意されています。入学前に自分に合ったコースを生徒自ら選ぶことが可能です。授業の内容こそ原則同じですが、ホームルームや道徳の時間の取り組みは、それぞれのコースならではの内容となっています。
また、開智中学校では、学校の魅力として「指導力ある優秀な教師陣」を挙げていて、教師の採用に積極的です。東大・京大・名古屋大などのポスドクキャリアフォーラムや帰国子女キャリア説明会、日本各地の採用説明会に参加し、教師の卵を発掘しています。生徒に魅力ある授業を提供するためにさまざまな工夫をしている学校です。
開智中学校の入試概要
開智中学校の入試について見ていきましょう。
2024年度の入試
2024年度の入試日程は1月10日午前に第一回、1月11日午前に特待A、1月12日午前に特待B、同日午後に算数特待、1月15日午前に第二回、2月4日午前に日本橋併願入試でした。募集定員は合計280名。受験料は全ての回が一回二万円でした。第一回入試・特待A・特待B・算数特待・第二回入試は開智所沢中等教育学校との合同実施です。どちらかのみの合否判定も可能ですし、両方判定を出してもらうこともできます。
なお、2024年度から新しく始まるハイレベルクラス「創発クラス」に入るためには、S特待で合格しなければなりません。特待A入試は合格者全員がS特待になります。対して特待B入試は半分以上がS特待・A特待・準特待のいずれかに振り分けられます。算数特待入試は合格者全員がいずれかの特待に振り分けられる入試です。
第二回入試の合否判定は三段階に分けて行われます。一段階目は、第二回の入試の得点での合否判定。二段階目は、複数回受験している場合に限り、難易度を踏まえた上で一番よい成績での合否判定。三段階目は、第一回と第二回の両方を受験している場合に限り、第二回の成績に三十点加点をした得点での合否判定となります。なお、第二回入試は開智中学校だけではなく、開智未来中学校・開智望中等教育学校も対象にしています。
他に、帰国生を対象にした入試も行われました。帰国生11月入試は開智日本橋学園中学校・開智望中等教育学校の帰国生入試を利用して合否判定するもの、帰国生1月入試は一般受験生と同じ試験を受けたあと、英語での面接を行うものです。
出願期間については、12月1日9時開始で、試験当日8時半まで受け付けていますが、帰国生11月入試だけは事情が異なります。web以外の手続きも必要なので注意が必要です。
合格発表は日本橋併願入試・帰国生11月入試が試験当日で、第一回・特待A・特待B・算数特待・第二回が試験翌日となっています。
2024年度の入試倍率
2024年度の開智中学校の入試倍率は以下のとおりです。なお、倍率は小数点第二位以下を四捨五入しています。
第一回受験者数は男子1299名、女子1085名。合格者数は男子828名で実質倍率は約1.6倍、女子628名で実質倍率は約1.7倍でした。その内、S特待の合格者数は男子2名、女子1名です。
第二回の受験者数は男子484名、女子404名でした。合格者数は男子176名で実質倍率は約2.8倍、女子135名で実質倍率は約3.0倍です。その内、S特待は男子2名、女子0名、A特待は男子4名、女子2名でした。
特待A入試では、男子381名、女子270名受験し、合格者数は男子147名、女子45名。実質倍率は男子約2.6倍、女子6倍です。特待B入試は、男子563名、女子412名が受験し、男子の合格者は360名、実質倍率は約1.6倍、その内S特待が39名、A特待が89名、準特待が109名。女子の合格者は246名で実質倍率は約1.7倍、その内S特待が17名、A特待が43名、準特待が77名となっています。
算数一科目の算数特待入試は、男子363名、女子179名が受験しました。合格者数は以下のとおりで、S特待が男子25名、女子4名、A特待が男子73名、女子15名、準特待が男子96名、女子44名でした。また、開智日本橋中学校の第四回入試を利用して合否を出す日本橋併願入試では、受験者数が男子67名、女子106名、合格者数は男子7名で実質倍率は約9.6倍、女子34名で実質倍率は約3.1倍でした。
2024年度の入試倍率
受験者数 | 合格者数 | 実質倍率 | |
---|---|---|---|
第一回 【男子】 | 1299人 | 828人 | 約1.6倍 |
第一回 【女子】 | 1085人 | 628人 | 約1.7倍 |
第二回 【男子】 | 484人 | 176人 | 約2.8倍 |
第二回 【女子】 | 404人 | 135人 | 約3.0倍 |
特待A入試 【男子】 | 381人 | 147人 | 約2.6倍 |
特待A入試 【女子】 | 270人 | 45人 | 約6倍 |
特待B入試 【男子】 | 563人 | 360人 | 約1.6倍 |
特待B入試 【女子】 | 412人 | 246人 | 約1.7倍 |
算数特待入試 【男子】 | 363人 | 194人 | 約0.5倍 |
算数特待入試 【女子】 | 179人 | 63人 | 約0.3倍 |
日本橋併願入試 【男子】 | 67人 | 7人 | 約9.6倍 |
日本橋併願入試 【女子】 | 106人 | 34人 | 約3.1倍 |
開智中学校における国語・算数・理科・社会の出題傾向
開智中学校の一般入試における国語・算数・理科・社会の出題傾向を紹介します。
国語は総合知識問題が多い
国語の試験時間は50分で配点は100点、大問の数は四つ前後です。総合知識問題の占める割合が大きく、漢字の読み書き、文法、語彙力を問う問題がたくさん出題されます。
そのため、読解文が得意でも知識が固まっていないと、合格点に到達するのは難しいでしょう。問題のボリュームも多いため、速読し、選択、空欄補充、記述などのさまざまな問題をこなしていかなければならないタイプの問題です。
算数の問題の難易度はさまざま
算数の試験時間は60分で配点は120点、大問の数は四つ前後です。ひとつの大問の中にさまざまな難易度の問題が段階的に出題される構成となっています。
最初は導入として難易度が易しい設定になっていますが、解き進めていくと徐々に難しくなっていきます。さまざまな問題も出るので頻出単元を中心に広く応用問題まで押さえておかなければなりません。特に、平面図形・立体図形・速さ・場合の数・比・数の性質・特殊算などがよく出ます。
理科は標準レベル
理科の試験時間は社会と合わせて60分で配点は60点です。大問の数は四つで小問は25問ほど。全分野から出題されます。社会とのバランスを考えて時間配分をしなければなりません。
出題形式としては、選択問題、用語を答える問題、記述問題などさまざまです。時事に絡めた問題が出題されるケースもあります。難易度は標準レベルで、そんなに捻った問題が出題されることはありません。
社会は論述問題に注意
社会の試験時間は理科と合わせて60分で配点は60点です。大問ではなく小問で、全分野の問題から出題されます。グラフや図表を絡めた問題が多いのが特徴です。
テーマがひとつ大きく設定され、そこに絡めた小問が出題されるのですが、内容は分野同士が絡んでいるところも多く、非常に横断的な出題となっています。説明記述や思考力を問う論述問題も出るため、ただ知識を丸暗記して解ける内容ではありません。
- 国語と算数は、比較的難易度が高いため様々な問題を滞りなく学ぶ必要がある
- 理科と社会は二つで60分のため、時間配分に注意が必要
開智中学校に合格したい。どんな勉強が効果的?
開智中学校に合格するためには、どういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
語彙力を確実につけよう
開智中学校の問題は語彙力がないと得点できません。語彙力を確実につけるためには、各単元に出てくる言葉をその都度きちんと調べて覚える必要があります。
「読解文はひと通り解いておしまい」という子供が多いですが、そうではありません。出てきた言葉でわからないものがあったら調べて頭に入れるようにしましょう。
説明文と物語文、両方が読めるように
読解文は説明文と物語文、両方が出題されるので、どちらにも対応できる必要があります。中学受験としては字数が多いほうではないですが、それでも速読のスキルは必要です。素早く意味が押さえられるよう、苦手なジャンルの問題ほど数をこなしておきましょう。
記述の練習をしよう
記述問題に時間をとられてしまい、効率的に解けないのが開智中学校の問題です。そのため、記述慣れしてサクサク解き進められるようにしておく必要があります。
百字程度の記述問題に慣れるところから始めましょう。要約や説明記述に対応できるようにしてください。
- 語彙力を身につけるために、わからない言葉が出てきたらすぐに調べるようにする
- 記述問題に時間を取られないように、さまざまな記述問題を解き、記述慣れをしておく
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
小問集合は解けるものから
単元別の大問とは異なり、小問集合では小問の番号順に難しくなるわけではありません。途中にいきなり手応えのある問題が混ざるので、解けるものから先に解いていくことをおすすめします。
算数の頻出単元
算数は頻出単元を中心に押さえておきましょう。頻出単元は平面図形・立体図形・速さ・場合の数・比・数の性質・特殊算などです。
単元別の大問では小問を解き進めれば解き進めるほど難しくなっていくので、各単元の基礎から応用までを広く押さえておくとよいです。
特殊算に慣れておこう
特殊算でよく出るのは旅人算、通過算、時計算、濃度算などです。種類がたくさんあるため、受験前に抜けているものがないか確認するようにしてください。
- 小問はわかるものから解き、わからない問題に時間を取られないようにする
- 特殊算は一通り勉強してさまざまな特殊算に対応できるようにしておく
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょう。
社会との時間配分を間違えないよう
社会と理科で時間がひと括りの学校は珍しくありませんが、その場合、時間配分の感覚が問われます。過去問をやり込む中で、自分にとってちょうどよい時間配分を見極めて実践するようにしましょう。
計算問題に対応できるように
計算問題がよく出題されるため、各単元の計算問題に対応できるようにしておきましょう。理科の中でも計算問題が苦手な子供は、繰り返し解くのを面倒臭がって避ける傾向にあります。「理屈さえわかっていれば本番にも解けるだろう」と楽観視してしまう子供がとても多いです。
しかし、解き慣れていない問題は本番にも解けません。メインの問題集だけでなく、演習問題が載っているサブの問題集もやり込むぐらい解いて、苦手を克服する必要があります。
知識は基本以外も固めて
知識は基礎的な一問一答で固めるのではなく、解説ページを読み込んで固めてください。開智中学校の理科の知識問題は細かな情報もよく出題されています。
- 社会も含めての60分のため、時間を測って問題を解いて時間配分を見極める
- 計算問題に対応できるように問題集で各単元の問題を繰り返し解く
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
時事問題を含めて勉強を
社会は地理・歴史・公民だけではなく時事問題からも出題されます。問題の出し方も分野別ではなくそれぞれの要素が絡み合った横断的な出題になるので、問われるのは総合力です。
そのため、日頃の勉強から、なるべく分野を超えて点と点を結び付ける覚え方が必要となります。
たとえば、県の情報が出たら地理のみで完結せず歴史とも結びつける、歴史背景を学んだらその時代のみに留まらず現在の社会におよぼした影響と結びつけてみる、といった具合です。過去問をやり込むと、どういう出題のされ方をしているかがわかるので、特徴をつかんでから広く学んでいくとよいでしょう。
考察問題に要注意
社会は考察問題の占める割合が非常に大きいです。思考力が求められ、思考するための知識量も合わせて求められます。そのため、問題の難易度自体は標準的でも、解けるようになるまでに苦労するかもしれません。過去問で出題形式に慣れるところから始めましょう。
- 総合的に問題が解けるように、地理、歴史、公民、時事問題の全てを結びつけながら勉強する
- 考察問題は問題集を繰り返し解いて慣れておく
算数が合否のカギとなりやすい入試
算数は難易度の幅も広く、受験者の間で点数のばらつきが出やすい入試だといえます。そのため、算数で高得点をとれる受験生は強いです。応用問題まで解ける力をつけておきましょう。国語は総合知識問題が多い分、読解で点を落としがちな人も得点しやすい内容です。逆にいえば、語彙力や文法が怪しい人はすぐに必要な知識を覚え込む必要があります。
理科と社会は制限時間がひと括りなので、どう時間配分するかが問われます。その上で、理科では計算問題や細かな知識に対応する力を、社会では横断的な出題にも対応できる知識量と思考力を身につけなければなりません。
全科目を通して変な捻り方をした問題は出ません。標準レベルの問題は確実に解ける状態を目指しましょう。過去問をやり込み、自分の苦手箇所はどこかを早めに把握し、対策することをおすすめします。