中学受験の勉強に限らず、勉強には子どもの性格に合った方法や声のかけ方があります。
性格の異なる子どもに、同じ勉強法・同じ声掛けをしても、同じ結果を生むことはありません。
中学受験をする子供の性格タイプ
子供の性格は大きく分けて9種類に分類されます。タイプごとの特徴を記したので、自分の子どもがどのタイプに当てはまるのかを考えてみてください。また、親が思っている性格と実際の性格は違うこともあるので、性格診断は子どもと一緒に考えると良いでしょう。
完璧主義者タイプ
自分にも他人にも厳しく、時間に1分でも遅れるのは我慢できません。何事も完璧にこなさそうとして、できない問題はできるようになるまでやろうとします。
お母さんタイプ
優しい性格で兄弟や友達の面倒をよく見ます。我慢強く、相手のミスを許しがちで、さらには相手のやるべきことも代わりにやろうとしてしまいます。
競争主義タイプ
局所的な集中力が高く、全てを結果次第と考える負けず嫌いな性格です。他人へのアドバイスが好きですが、間違いを指摘されることは嫌います。
お気楽タイプ
何ごとも「なんとかなる」という考えを持ち、様々な物事に挑戦したいと思っています。声が大きく、どんな相手とも笑顔でコミュニケーションが取ることができ、嫌なことがあってもすぐに気分を切り替えることができます。
アーティストタイプ
強いこだわりと豊かな創造性を持ち、感受性が鋭く、時折理解できない行動をとることがあります。現実逃避が目立ち、自己アピールに気を使いがちで、好き嫌いがはっきりしています。
研究者タイプ
マニアックで、興味のないことには全く意識が向きません。好奇心旺盛で、特に自然科学に強い興味を抱いています。一つの事に囚われがちで、深く追求したいという欲求が強く、思考が飛びやすい傾向があります。
コツコツタイプ
慎重に行動し、まじめすぎる性格で一つのことに囚われがちです。責任感が強く、意志も強いが、その一方で頑固で無理をすることがあります。
リーダータイプ
自尊心が強く、人の上に立ちたがり攻撃的な一面がありつつも、強い行動力と自信過剰な要素を備えています。はっきりとした白黒思考で、自分が正しいと確信した場合はどんな人にでも意見を述べることができる性格です。
協調タイプ
穏やかな性格で、周りの目を気にし過ぎて目立つのを嫌う一方、人の話をよく聞く姿勢を持っています。マイペースながら優柔不断になりがちな一面もあります。
性格別勉強法
自分の子どもの性格はどのタイプにあてはまったでしょうか。次は性格ごとの勉強法について解説します。性格ごとに効果的な勉強法や声のかけ方があるので、注意しつつより良い学習環境を作ってあげましょう。
完璧主義タイプ
- 全てが最初から完璧にはいかないことを伝える
- 時間制限を設けて時間内に問題を解ける練習をする
- 時には諦めることも大切なことを教える
やるべきことは確実に果たしたいと考えている完璧主義者は、初めて取り組む問題も完璧にやらなければいけないと考えてしまう傾向にあります。間違えを極度に恐れる傾向にあるので、練習問題は「間違えても良い」ということをしっかり伝え、間違えから学ぶことを教えると良いでしょう。
ケアレスミスを非常に嫌うので、何度も見直して結果として時間が足りなくなってしまうことがあります。全ての問題を解くためにも、見直しが重要なことは伝えつつも、時間配分に注意することを常日頃から気をつけるようにしましょう。
お母さんタイプ
- 自分のために勉強できなければ親のために勉強して欲しいと伝える
- 他者に教える時間を作る
- ストレスを溜めすぎないように注意してみてあげる
教え合いの重要性
お母さんタイプのお子さんは、自分のためよりも他者のために頑張れることが多くあります。ですので、モチベーションが下がってきたなと感じたら、「子どもが頑張ってくれて、私(親)が嬉しい」と伝えてあげるとモチベーションが高まります。また、年の近い弟や妹がいるのであれば、兄弟に勉強を教えるということも効果的です。
現在、多くの教育機関でも「教え合い」の重要性が説かれていますが、他者に教えるためには「知っている」だけでなく「理解している」ことが重要となります。そのため、他者に勉強を教える事で自分自身の勉強の理解力が高まり、結果として学習に良い影響を与えます。
注意が必要な癖と対処法
学習において他者を優先してしまう癖が悪影響を与えることがあります。塾では他の子どもに遠慮をして質問ができない場合があるので、そういった傾向が見えたら積極的に質問しても良いことを伝えてあげましょう。家庭教師をつけてあげれば、誰に気兼ねすることなく質問ができるので効果的です。
お母さんタイプの子どもは我慢強いため、ストレスを外に出さず、親がストレスに気付けない場合があります。子どもの些細な変化を見逃さず、特にスランプに陥ってしまった際のケアをしっかりしてあげることで、成績向上にも結び付きます。
競争主義タイプ
- 目標までの「距離感」を常に意識させる
- 勉強は「理解」が必要なことを伝える
- 速度だけでなく正確さを鍛える
他者と競うことにモチベーションを見出すタイプの子どもは、模試の結果などを使って、目標到達までの距離がどの程度なのか、合格圏内にあとどのくらいで届くのかを視覚的に理解できるようにしてあげると勉強に励みが出ます。
競争主義タイプの子どもは、時として「時間」で他者と競ってしまう事があります。同級生よりも早く勉強の範囲を終えることや、テストを早く終わらせたことで達成感を感じてしまう兆候が見られたら要注意です。その時には成績で他者と比較してあげ、早さも重要ですが、学習には理解が重要なことを伝えましょう。
お気楽タイプ
- 失敗やミスの原因を理解させる
- 合格後の未来予想図を描かせる
- 短期目標を設定させ少しずつステップアップさせる
弱点の理解
とにかく楽天的なお気楽タイプは親御さんをヤキモキさせることが多いです。ケアレスミスを繰り返しても「細かいミスはしょうがない」とばかりに気にせず同じミスを繰り返します。何度も同じミスを繰り返しても、そこが自分の弱点だという事を理解していないので、そこが弱点になっていることを注意し、改善させましょう。
モチベーションの上げ方
注意力が散漫になりがちで集中力の持続もきかない性格ですが、未来に対する視点だけは人一倍鋭い傾向にあります。中学に合格したら何をしたいのか、どういった大人になりたいのか、そういった「未来予想図」がモチベーションになりやすいので、希望に満ちた未来を実現させるために今努力することを伝えてあげてください。
長い時間の集中が続きにくいため、小さな目標を少しずつクリアしていく「スモールステップアップ」が有効です。低い目標をクリアしたら、次はそれより少し高い目標を与え、他のタイプよりも干渉をやや強めに対応するのが良いでしょう。
アーティストタイプ
- 他者と同じ行動が苦手なので家庭教師に依頼する
- 1か所にこだわり過ぎないようにする
- 高圧的にならないように注意する
独自性を大切にする
非常に強いこだわりを持つアーティストタイプの子どもは、他人と一緒に「よーいドン!」で行動するのが苦手です。また上から目線が強い大人に対して反発心を持ちやすい傾向にあります。こういた点から、塾よりも家庭教師向きの性格と言えます。家庭教師に依頼する場合には、指導時に高圧的に注意しないようお願いした方が良いでしょう。
注意が必要な癖と対処法
ひとつの問題にこだわりすぎる傾向があります。特にギリギリ解けそうな問題に執着することがよくあるので、模試の際に「まずは全体を終えること」に慣れさせ、本番でひとつの問題にこだわり過ぎないことに慣れさせた方が良いでしょう。
他者と比較されるのを非常に嫌がるので、褒めたり叱ったりする際には、他者との比較ではなく、どれだけ本人が頑張ったかに着目してあげた方が良いでしょう。
研究者タイプ
- 好きな分野のみに注力しがちなので苦手分野に時間を割くように指導する
- 興味のある分野にのめりこみ過ぎるので進度を親や家庭教師で設定する
- 「面白い」と感じさせると非常に伸びる
このタイプのお子さんは自分が好きな分野をとことん突き詰めようとします。自主的にやらせていると受験に必要ない範囲まで探求してしまうので、一定の進度で進む集団塾の方が向いています。
また、興味が無い分野に使う時間があれば好きな分野を探求しようとしてしまうため、苦手な分野に時間を割くようにする必要があります。そういった観点から、苦手分野があれば、そこだけでも家庭教師を付けるのが良いでしょう。
苦手な分野でも「面白い」と感じたら探求するので、子どもの苦手分野に対して指導に定評のある講師を探してあげると良いでしょう。
コツコツタイプ
- 分からないところは素直に言える環境を整え、理解ができない範囲に固執しないようサポートする
- 発見した苦手な部分は丁寧に教えてあげる
- 小さな目標を設定し、ステップアップの実感を持たせてあげる
責任感の強さ
お母さんタイプと近いタイプですが、自分のために力を使う事ができるので、家庭学習もしっかりと行うことができます。真面目な性格のためキチンと言われた範囲の勉強をこなしますが、持ち前の責任感の強さから、できない部分があることを認めることが苦手です。そのため理解ができない範囲に捕らわれてしまい、机に向かう時間が長いのに成果が出ないことがあります。
注意が必要な癖と対処法
机に向かう時間が無駄に長くならないように、「分からないところは分からない」と言えるようにできる環境を整えてあげると良いでしょう。ある単元でつまずいても、宿題や課題は解こうと頑張るのですが、かえってそれが「理解」の妨げになることがあります。小テストや模試で苦手な部分が発見出来たら、理解ができるように丁寧に教えてあげましょう。
過度な目標にも無理と言えずに頑張ってしまう傾向にあるので、小さな目標も据えて、着実にステップアップしている実感を持たせてあげましょう。それがやがてモチベーションの維持にも繋がります。
リーダータイプ
- 模試やテストの結果を評価してあげる
- 自尊心の高さを自覚させる
- 課題などを勝負に置き換える
自尊心と行動力を備えたタイプ
とても自尊心が高く、その自尊心に見合った行動力も併せ持つのがリーダータイプの子どもです。何事にも白黒ハッキリつけて、自分がおかしいと思ったら大人相手でもしっかりと意見を言えるタイプです。競争心も高いため、模試やテストなど他者との比較や自身の順位が出るものが大好きです。次も高順位をとることがモチベーションに繋がるので、模試などをどんどん受けて本番の練習にしたり、本人の原動力にしたりしましょう。
注意が必要な癖と対処法
自尊心が高いため、質問をすることが苦手な場合があります。その自尊心の高さが学習の妨げにならないように、「分からないことは恥ではなく、分からない状態を続けることが恥である」ことを説明して、先生に分からないところを質問できるように誘導してあげましょう。
勝負事が好きであるケースが多いため、モチベーションが下がってきたなと感じたら、中学受験をレースに置き換えて競争心を煽るのも良いでしょう。模試の結果などからライバルがどのくらいいるのか、今の状態で中学受験を勝ち抜けるのかを示してあげるとモチベーションが上がるでしょう。
協調タイプ
- 他者からの目線が気になる性質のため1人で学習する環境を作る
- 模試の結果にこだわり過ぎず着実に目標到達を意識させる
- 合格した後のイメージを持たせる
他者との競争が苦手なタイプなので、模試の結果から他者との競争を促してもモチベーションは上がりません。また、目立つのが苦手なため、模試の結果が優秀でも友人に誇ることはしたくないと考えています。
周囲の言葉に人一倍敏感なので、1人で勉強できる空間を持たせてあげると良いでしょう。同じ理由から集団塾よりも家庭教師での学習の方が、自分のペースを保って勉強ができます。
競争心を煽ってもあまり効果はありません。代わりに、中学受験が成功し、周りの友達と楽しく過ごすイメージを持たせることがモチベーションの向上に繋がります。
個々の学習スタイルで目標達成を目指す
兄弟・姉妹でも性格は全然違う者です。上の子が無事に合格したやり方でも、下の子も同じやり方で通用しないことがほとんどです。その子に合った学習方法や声かけで、第一志望合格を勝ち取りましょう。