聖光学院中学校はキリスト教の理念を大切にしている学校です。難関校のひとつとしても知られる、進学実績の高い学校として知られています。この記事では、聖光学院中学校を目指す家庭に向けて出題傾向と勉強法を紹介します。
そもそも聖光学院中学校ってどんな学校?
聖光学院中学校はキリスト教教育修士会を母体とする学校で、高等学校も備えた男子校です。1958年に聖光中学校として設立されました。キリスト教的価値観や倫理観に重きを置いています。献身の精神と、高度な学識をかねた社会の成員を育成することが目的です。なお、姉妹校には静岡聖光学院中学・高等学校があります。
整ったICT環境で情報教育を行っていて、オンラインの英会話レッスン、作文の共同編集作業や、プログラミング学習などに注力。これからを生きる人間を育てるための充実したカリキュラムです。国際教育にも熱心で、ホームステイだけではなく、海外企業を訪問したり、海外でのボランティアを行ったりとさまざまな取り組みを行っています。学校の行事やプログラムも充実していて、聖光塾といった短期集中型のユニークな講座も開講されています。
ちなみに、聖光学院中学校は高校に内部進学したあと、半数以上が理系に進みます。2025年度は東京大学95名や慶応大学152名、早稲田大学188名と錚々たる合格実績です。
聖光学院中学校の入試概要
聖光学院中学校の入試概要を見ていきましょう。
2025年度入試
第一回入試は175名募集で試験日は2月2日日曜日、第二回入試は50名募集で試験日は2月4日火曜日でした。出願期間は第一回が1月12日日曜日9時から2月1日土曜日23時59分まで、第二回が1月12日日曜日9時から2月3日月曜日23時59分まで。
帰国生入試は若干名の募集で試験日は1月11日土曜日、出願期間は12月2日月曜日9時から1月9日木曜日23時59分まででした。入学選考料は各回30,000円です。
2025年度入試倍率
聖光学院中学校の倍率は第一回が717名受験で212名合格、実質倍率は約3.4倍でした。第二回が674名受験で108名合格、実質倍率は約6.2倍でした。帰国生入試は126名受験で26名合格、実質倍率は約4.8倍でした。なお、実質倍率は小数点第二位以下を四捨五入しています。
入試区分 | 受験者数 | 合格者数 | 実質倍率 |
---|---|---|---|
第一回 | 717名 | 212名 | 約3.4倍 |
第二回 | 674名 | 108名 | 約6.2倍 |
帰国生 | 126名 | 26名 | 約4.8倍 |
聖光学院中学校における国語・算数・理科・社会の出題傾向
聖光学院中学校の一般入試における国語・算数・理科・社会の出題傾向を紹介します。
国語は語彙力がないと解けない
国語は試験時間60分で配点が150点、大問は四つです。大問一は漢字の書き取り、大問二は語彙、大問三は物語文、大問四は説明文です。
大問一の漢字は難しくはないですが、語彙力が足りないと正答を思い浮かべづらい問題もあります。大問二では2025年度は「臍(ほぞ)を噛む」「脚光を浴びる」といった表現の動詞部分の穴埋めでした。よく使う言い回しばかりですが、こちらも語彙力がないと解けません。
大問三の物語文も正しい言葉の意味を選ぶ問題が多いです。記述も短いものから八十字以内の指定まで出ています。大問四の説明文では熟語の構成を問う問題や、文中に相応しい言葉を選ぶ問題が出ていて、こちらも語彙力が欠かせません。
算数は良質な難問も
算数は試験時間60分で配点が150点、大問は五つです。大問一は計算問題含む小問集合で大問二以下は単元別の出題となります。小問集合は三問程度で少なく、計算一問、他の小問二問の形式です。
立体図形、平面図形、速さ、場合の数、規則性などが頻出といえます。定番の問題にひと捻りを加えた問題が多く、先入観をもって解かない姿勢が必要です。思い込みだけで解くとミスを招いてしまいかねません。なお、問われた内容を図示するタイプの問題も出題されます。
理科では化学、物理が難しい傾向にある
理科は試験時間40分で配点100点、大問は四つです。ひとつの分野につき、ひとつの大問が割り振られています。難易度は問題によってばらつきがありますが、難しい問題も少なからずあります。
基礎知識も出題される一方で、難しい問題も出るので注意が必要です。分野で言うと、生物、あるいは地学は比較的解きやすい問題が多いですが、化学、物理は難問が多い傾向にあります。
社会は思考力を問う問題も
社会は試験時間40分で配点が100点、大問は四つです。地形図や地図、資料からの出題や雨温図を読み解く問題も出ます。大河ドラマの話題と絡めた出題がされた年度もあり、歴史上の人物や出来事で話題を集めているものがあれば、広くチェックしておくとよいです。知識問題が出る一方で、思考力を問う問題も出題されます。
- 国語は語彙力が欠かせず、算数は「ひと捻り」ある問題が多い
- 理科は化学、物理で難問が多い傾向にあり、社会は思考力を問う問題も出題される
聖光学院中学校に合格したい。どんな勉強が効果的?
聖光学院中学校に合格するためには、どういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
漢字を書けるように
漢字の書き取りは正確さを身につけることも大切ですが、意味を理解し使いこなせるようにすることも欠かせません。意味が分かっていないと、同音異義語を書いてしまいかねないためです。国語の勉強をする際には実際の文章の中で言葉がどう使われているかに常に注目してください。
語彙力アップが肝心
漢字にせよ、読解にせよ、語彙を重視した問題が出題されています。語彙力が不足している自覚があるのなら、日頃から読解文に取り組む際にわからない言葉を調べ、確実に覚えるよう取り組んでください。語彙力はコツコツ増やしていかないと、受験本番前に一気に詰め込むはめになります。聖光学院中学校の問題では、言葉の正しい意味を知っていないと答えられない選択問題が多いです。適切な言葉を埋め込む問題がよく出ます。
記述問題対策を
説明文と物語文が出題されます。選択問題はもちろん、どちらの記述問題も確実に解けるようにしておきましょう。二十字以内や八十字以内といった字数指定の問題です。設問の指示をしっかりと読み取り、キーワードを落とし込み、正確な文末表現で書いてください。
- どの問題でも語彙力が必要となるため、問題集をやり込み語彙力を増やしておく
- 字数指定の記述問題が出るため、文末表現に気を付ける習慣をつける
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
難易度順に出題されるわけではないので注意
算数は難易度順に出題されるわけではないので、注意して取り組みましょう。タイムロスしそうな大問があったら順序を入れ替えて解いてください。標準的な問題と難問が混在しています。極端に難しい問題ではないですが、ひと捻りした思考力を要する問題が多いです。
頻出単元を中心にやり込んでおこう
立体図形、平面図形、速さ、場合の数、規則性などがよく出題されます。特に立体図形は立体が苦手な子供には解きづらい問題が多く、立体を転がしたり、立体を切断したりする問題が出されています。類題をたくさん解いて、思考のパターンに慣れておいてください。平面図形でも五つの点が移動する問題など、複雑な思考を要求する内容が出題されています。
受験問題集の応用問題が解けることが前提ですが、思考力を問う問題も多く、なかなか正答を導き出すのに苦労するかもしれません。過去問を数多くやり込むことで、まずは問題の方向性に慣れてください。その上で、問題集をやり込み、できるだけ多くの問題を解くことで、思考力を問われた際にも解法の糸口をつかめるだけの実力を身につけておきましょう。
グラフや作図の出題にも対応できるように
グラフ作成や作図の問題も出題されるので、対応できるよう練習しておきましょう。グラフも図も、ゆがんだ線を書くことのないようにしてください。雑に書く習慣がついていると本番でもいい加減な線を引きがちです。自分では書けているつもりでNGというケースもあるので、塾の先生や家庭教師に採点してもらいましょう。
- 頻出単元を中心にとにかく問題数を多くこなす
- 他の学校にはない類の問題が出るため過去問で慣れておく
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
独創的な問題が出ても落ち着いて取り組もう
理科では独創的な問題が出ます。たとえば、地学の問題で、月に絡めて和歌が出題されるといった意外性のある内容です。小倉百人一首の中から「有明の月」を詠んだ歌を選ぶ問題で、理科の知識だけで解ける問題ではありません。どちらかといえば、国語の問題なので、横断的な出題といえるでしょう。
「有明の月」がどういう月なのかは説明されているので、和歌で詠まれたシチュエーションがどういうものなのかを整理すればおのずと答えは見えてきます。
思考力を問う問題も出題
知識を用いて考える問題はもちろん出題されますが、問題文から情報を読み取って答えを落とし込む問題も多いです。たとえばタイツを作るときに110デニールの糸がどれぐらい必要かを問う問題は、一般的な受験問題集にはまず載っていません。問題文で提示された情報を整理し考えて、自らの頭で解く類の問題です。
単元への理解が不足していると、小問の多さにつまずく
ひとつの大問の中で小問が多く展開することがあります。単元への理解が不足していると、続けざまに間違えてしまいかねません。そのため、頻出単元を中心に満遍なく勉強しておく必要があります。特にここ二年は大問三でその傾向にあるので注意して臨みましょう。
- 過去問を活用し自分の頭で考えて解く独創的な問題に慣れておく
- 頻出単元を中心に単元への理解を深めておく
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
2024年度の歴史は小倉百人一首から展開
大河ドラマの影響もあってか、2024年度は小倉百人一首を皮切りに、和歌や川柳や俳句についての問題が展開しました。2025年度の大問二では、大河ドラマと絡めています。聖光学院中学校を受けるのなら、大河ドラマを観ておくとよりスムーズに問題が解ける可能性があります。
問題からは、現代を生きる受験生になにを問うのがよいのか、という視点が強く感じられるため、社会関連で話題になっているものは押さえておきたいところです。
社会問題にも関心を持とう
コンテンツだけの話ではなく、社会問題に関してもその傾向が強くあります。過去には、ジェンダーギャップの問題や、政府が「老人」の定義の見直そうとしている問題などが出題されていて、「今」を考えることを受験生に促しています。社会はあくまで暗記科目ではなく、今を生きる問題につながっているので、こうした傾向は難関校では非常に多いです。日頃から、きちんとした情報を取り入れて考えましょう。
インターネット上には無責任な言説があふれているので、考える訓練をするためには、さまざまな専門家の意見に触れることが大切です。
地理では地形図や地図が多く出題
地理では地形図や地図が多く出題されています。もちろん、頭に入っていることが大前提です。白地図をやり込み、各地域の位置関係や名称、特徴を頭に入れましょう。グラフで地域ごとの特徴をまとめた問題もよく出るので、そちらも合わせて押さえておきたいところです。
合格者平均点が高いので要注意
社会の合格者平均点は七割から八割台と高いので、ケアレスミスはぜったいに避けなければなりません。時間内に隅々まで解けるようにすること、最後まで注意力を失わないことが大切です。過去問をやる際には制限時間内で感覚を磨いてください。
- 暗記だけではなく大河ドラマを観たり、社会問題に関心を持って「今」を考えられるようにする
- 合格平均点が高いため過去問で時間配分を身につけ、ケアレスミスをなくせるようにしておく
思考力を問う問題が多いので対応できるように対策を
聖光学院中学校では受験生の思考力を問うような問題が多く出題されます。まずは、過去問をやり込み、どんな問題が出ているのかを確認するところから始めましょう。
国語は語彙力を増やす作業が必要です。どうしても読解文は問題を解くのに時間がかかるため、それだけで手いっぱいになります。知らない言葉への理解を疎かにする傾向自体は無理もないことです。しかし、問題集をやり込むたびに、出てきた語彙を頭に入れておけば問題への対応力はぐんと上がります。
算数は頻出単元を中心に問題数を多くこなすことが欠かせません。ただし、受験問題集に載っているタイプとは毛色の違う問題も出るため、過去問を通して慣れておいてください。先入観だけで解いてミスしないようにしましょう。そのためには準備が欠かせません。作り手は何点ぐらいを想定していたかを知りたいところです
理科ではときに理科らしくない問題も出題されます。身構えてしまいがちですが、解法は文章の中にあるので焦らずよく考えてください。
社会もまた、理科と同様、独創的な問題が出題されるケースがあります。社会問題や大河ドラマにも関心を寄せておき、解くための引き出しを増やしておいてください。