大妻中学校は千代田区にある完全中高一貫の女子校です。人間教育に力を入れた校風で知られています。この記事では、大妻中学校を目指す家庭に向けて、各科目の出題傾向と勉強法を紹介します。
そもそも大妻中学校ってどんな学校?
大妻中学校は千代田区にある長い伝統を誇る女子中高一貫校です。校訓に「恥を知れ」を掲げています。「恥を知れ」という言葉は強烈ですが、自分自身を律する心の大切さを表わすものです。同時に自律だけではなく自立にも重きを置き、社会で長く活躍できる女性の育成を目指しています。
大妻中学校では、中高一貫教育の利点を生かしながら、さまざまなカリキュラムを展開しています。六年を二年ずつで区切り「基礎力養成期」「充実期」「発展期」に分け、それぞれの段階に応じた効果的な教育を実施。その学びを支えているのが、「グローバル教育」と「ICTの活用」、それから「探究的な学習」、「社会に開かれた学校」、「安心して学べる環境」といった理念です。たとえばグローバル教育では、グローバル社会を生きるための思考力とコミュニケーション能力の習得を目指しています。具体的な取り組みとしては、学期留学や海外研修プログラム、中国語講座、模擬国連、国内イングリッシュキャンプなどが挙げられます。
充実した施設を誇っている学校で、校舎は地上九階、地下一階です。約43,000冊の蔵書を持つ図書室や二つのアリーナなどの立派な設備が、大妻中学校の学校生活を豊かなものにしています。一クラスは約四十名で構成され一学年は七クラス。学年の人数は、約280名です。クラスには担任が一人と、副担任が二人つき、他にも数人の学年付教員がいます。
進路実績は2024年度卒業生を見ると、国公立大学29名、早慶上理134名、GMARCH282名です。海外大学へ進学する人も少なくありません。
大妻中学校の入試概要
大妻中学校の入試概要を見ていきましょう。
2026年度入試
2026年度の一般入試は第一回が2月1日(日)、第二回が2月2日(月)、第三回が2月3日(火)、第四回が2月5日(木)です。募集人員は第一回と第二回がそれぞれ約100名、第三回と第四回がそれぞれ約40名です。出願期間はすべて1月10日(土)0時開始で、第一回が1月31日(土)12:00まで、第二回が2月1日(日)23:59まで、第三回が2月2日(月)23:59まで、第四回が2月4日(水)23:59まで。帰国生入試は12月9日(火)実施。出願期間は11月15日(土)9:00~12月5日(金)17:00です。一般入試も帰国生入試も検定料は各回22,000円に設定されています。
2025年度の入試倍率
2025年度の第一回は受験者数243人で合格者数115人、実質倍率は約2.1倍です。第二回が受験者数524人で合格者数265人、実質倍率が約2.0倍。第三回は受験者数250人、合格者数76人で実質倍率は約3.3倍。第四回が受験者数263人で合格者数68人、実質倍率は約3.9倍です。帰国生入試は受験者数50人で、合格者数37人、実質倍率は約1.4倍でした。なお、実質倍率は小数点第二位以下を四捨五入しています。
入試区分 | 受験者数 | 合格者数 | 実質倍率 |
---|---|---|---|
第一回 | 243名 | 115名 | 約2.1倍 |
第二回 | 524名 | 265名 | 約2.0倍 |
第三回 | 250名 | 76名 | 約3.3倍 |
第四回 | 263名 | 68名 | 約3.9倍 |
帰国生 | 50名 | 37名 | 約1.4倍 |
大妻中学校における国語・算数・理科・社会の出題傾向
大妻中学校の一般入試における国語・算数・理科・社会の出題傾向を紹介します。
国語は韻文までできるようにしよう
国語の制限時間は50分で配点は100点、大問は四つです。大問一、二は物語文と説明文、大問三は韻文の鑑賞文、大問四は漢字の読み書きとなっています。物語文・説明文は受験の定番ですが、韻文の鑑賞文に関しては不慣れな受験生が多いことでしょう。
文章量が一万字に達する年度もあるため、速読必須のタイトな問題となっています。出題形式はさまざまで、選択問題が多めで、抜き出し、並べ替え、字数指定の記述などがあります。
算数は大問が多いのが特徴
算数の制限時間は50分で配点は100点、大問は十と多めです。その分、大問ひとつあたりの問題数は少なめといえます。大問一は計算と小問が合わせて四問ほど、大問二以降は単元別の出題となっています。頻出単元は図形問題です。濃度算や年齢算、仕事算など特殊算の問題が多いのも特徴です。大問の数が多いため、その分出題範囲は広いといえます。全体的に難易度は高くなく、ほとんどが標準レベルです。
理科の大問一は小問集合
理科は制限時間30分で配点は60点、大問は四つです。理科で大問が四つというと、分野ごとに大問を分けている学校が多いですが、大妻中学校の場合、大問一は小問集合です。そのため、大問一はさまざまな分野をまたがった出題、大問二以降は分野別の出題となっています。いずれにしても、全分野から出題されることに変わりはありません。選択問題が多いですが、記述問題や図に書き込む問題も出題されます。
社会は各分野からの出題
社会は制限時間30分で配点は60点、大問は三つです。大問ごとに各分野からの出題となっています。地理は地図やグラフ、図表の読み取りが多いです。歴史はリード文を読み、関連する内容を広い時代にわたって答えます。公民分野は時事と関わる内容が多く、社会問題にも目を受けておきたいところです。出題形式は、選択問題や語句記入が中心です。説明記述も出題されることがあります。
- 国語は語彙力と速読スキルが欠かせず、算数は図形問題が頻出
- 理科と社会は時間がタイトで時事関連の出題がある
大妻中学校に合格したい。どんな勉強が効果的?
大妻中学校の一般入試に合格するためには、どういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
漢字の読み書きに対応できるように
漢字の読み書きは大問として独立しているにもかかわらず、問題数は少ないです。読みが一問、書きが二問の計三問。確実に得点したいところです。難しい漢字が出るわけではないので、日頃から漢字をコツコツやり込んでおきましょう。
速読が欠かせない
分量が多いのでスピードが求められます。速読で解いていかなければなりません。字数は年度によって差がありますが、一万字を想定しておきたいところです。50分以内で対応できるように仕上げましょう。字数指定の説明記述や抜き出しなども複数出題されるため、読むのも書くのも素早い処理が求められます。日頃から意識して練習しておかないと対応するのは難しいです。タイマーをセットしてどのぐらいの速度で読めているか、記録してください。少しずつレベルアップを図ります。
物語文は読みやすいものが多い
物語文は文章が平易で読みやすいものが多く出題されています。心情の変化を理解できていないと解けない問題が多数なので、物語文を読むときは主人公を中心とした感情描写に注目しましょう。感情の変遷のわかる箇所に線を引くことをおすすめします。
語彙力を問う問題が多い
文中に出てきた慣用句を穴埋めで完成させる問題や、類義語を選ぶ問題、正しい副詞を選ぶ問題など、語彙力を問う問題も多く出ます。日頃から文章を読む際、知らない言葉は必ず調べ頭に入れておきましょう。その言葉だけを切り離して覚えるのではなく、文脈の中での理解が大切です。
説明文の大問は読解より知識問題が多いことも
説明文というだけで身構えてしまう子供は少なくありません。たしかに物語文に比べて文体に堅苦しさを感じるものも多いですが、大妻中学校の問題は比較的読みやすい題材や文体を選んでいます。さらに、大妻中学校の説明文の大問では、読解だけではなく語彙や文法、総合知識問題などが出題される傾向にあります。そのため、説明文自体がわからなかったとしても、解ける問題は多いはずです。
韻文の鑑賞文に慣れておこう
大妻中学校の国語ならではの出題が韻文の鑑賞文です。中学受験でこうした問題を出す学校は少な目なので、あまり対策できていない子供も多いでしょう。まずは過去問を解いてどんな問題が出ているのかを確かめてください。韻文の知識も問われますが、同じぐらいここでも語彙力が問われます。語彙力を固めることが、一番得点につながりやすいでしょう。
- 漢字の読み書きでは確実に得点できるように毎日コツコツやり込む
- とにかく速読は必須で全体的にスピーディーに解き進める練習をしておく
- 語彙力を問う問題が多いため知らない言葉はすぐに調べる習慣をつける
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
計算や小問では失点しない
大問一で出題される計算や小問は点取り問題です。計算は小数や分数、括弧を使った四則計算なので、ケアレスミスをするかしないかで差がつきます。小問は各単元の例題で扱うような、一番基本レベルの問題です。出題範囲を勉強できていればまず解ける難易度なので、とりこぼしなく勉強しておきましょう。
標準問題が多い
いわゆる「難問」の出題が少ないのが特徴です。その代わり大問の数が多い分、範囲が広いので満遍なく出題範囲を押さえておく必要があります。特殊算からの出題が多いので、まずは特殊算に関連する単元をやり込むところから始めてみてください。特殊算は抜けてしまっている子供もいるので、受験前までにすべて復習しておきましょう。
図形問題も集中的に対策を
図形問題の出題の多さも特徴です。角度や辺の長さ、体積や面積を問う問題がよく出題されています。過去問を解いて難易度や出題傾向を把握できたら、集中的に問題集の単元をやり込むようにするとよいでしょう。
解答用紙には途中式や考え方の記述を
大妻中学校の解答用紙は、途中式や考え方の記述を求めるタイプです。そのため、自分がどのように問題を解いたのかを書き出す練習をしておかなければなりません。途中式や考え方を省きがちな子供も多いので、日頃から練習しておいてください。特に書きなぐってしまう習慣がついている子供は、早いうちから改めておきましょう。相手に伝わる書き方で、なおかつ与えられたスペースに収められるよう練習が必要です。
- 計算や小問で失点しない様に基本レベルをとりこぼしなく勉強しておく
- 図形と四則計算が頻出なので問題集をやり込む
- 相手に伝わるような途中式と考え方を与えられたスペースに書きこむ練習をしておく
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
基礎知識問題では確実に得点を
基礎知識問題も一定数出題されています。確実に点数をとっておきたいところです。各単元の一問一答を押さえておくようにしましょう。
計算問題は正確さとスピードの両方を
計算問題が複数問出題されることも多いので慣れておきましょう。問題に対し制限時間がタイトなので、計算で手こずっていると時間切れになってしまいかねません。計算はなるべく多くの問題数をこなしておいてください。
時事問題にも対応できるよう
時事関連の出題をした年度もあるので、社会だけではなく理科のトピックでも時事をチェックしておくようにしましょう。
- 基礎知識問題で失点しないようにしっかりと押さえておく
- 時事問題が出る可能性があるので日ごろから理科のトピックに関心を持つ
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
問題数が多いので時間に注意
説明記述が少ないとはいえ、問題数自体は時間に対して多めなので、素早く解いていく必要があります。時間配分のイメージがつかめるよう、過去問を通してトレーニングしておくことをおすすめします。
漢字で書けるように
語句を書く問題の数が多いため、漢字の名称は漢字で記入できるようにしておいてください。字の間違いで減点されることのないようにしましょう。
思考力を問う問題も
社会に関心を持っていたほうが解きやすいタイプの思考力問題がよく出題されます。日頃から、世の中の背景に関心を寄せるようにしましょう。
- 時間配分は過去問で練習しておく
- 思考力問題がよく出題されるため世の中の情勢に関心を持つ
基礎から思考力を問う問題まで
大妻中学校は飛び抜けた難問こそありませんが、基礎から思考力を問う問題までがバランスよく出題されます。出題傾向を把握し、科目ごとの対策を立てるようにしてください。
国語は字数が多いので、スピーディーに解く能力が求められます。時間のかかりがちな説明記述も出るので、時間内に終わらせるためには過去問のやり込みが欠かせません。問題に慣れ、当日時間配分でミスをしないようにしましょう。また、語彙力を問う問題がよく出るので、日頃からの積み重ねが問われます。
算数は標準レベルの問題が多く解きやすいですが、大問が多いので、範囲が広いです。その中でも図形や特殊算は頻出なので、重点的に対策しましょう。
理科は問題数が多めなので、計算問題をスピーディーに解けるようにしてください。基本レベルの問題で失点しないことも大切です。ニュースをチェックし、理科に関連するトピックは押さえておいてください。
社会も理科と同様、問題数が多めなので時間に注意しましょう。語句記入の問題が多いので、必ず漢字で書けるように仕上げます。日頃から社会問題に関心を持ちましょう。