公立中高一貫校に受かる子の勉強時間。一問に時間がかかる?

公立中高一貫校に受かる子の勉強時間。一問に時間がかかる?

公立中高一貫校の受検では、記述問題が出題されます。要点をまとめて、長文で解答を書かなければならない問題も多いです。そのため、ほとんど進まないまま、その日の勉強が終わってしまうこともあります。この記事では、公立中高一貫校に受かるための勉強時間について紹介します。

公立中高一貫校の勉強はいつから始める?

公立中高一貫校の勉強はいつから始める?
公立中高一貫校の受検対策をいつからどのように始めるかは悩ましいところです。低学年向けのカリキュラムを用意している教育サービスもありますが、どちらかといえば足りない基礎学力を補う意図でコースを設定しているところが多いと言えます。
一般的には小学五年生からですが、それで間に合うかどうかは本人の基礎学力次第です。逆に、基礎学力や適性があれば小学五年生から気合を入れて学ばなくても、間に合う子供もいます。
中には、小学校6年生の夏休みまでは家庭学習で進めて、塾や家庭教師といった教育サービスを活用する時期をギリギリまで遅らせる子供もいます。ただし、ギリギリまで家庭学習だけで進めるのは、保護者の時間的精神的な余裕と指導力がないとなかなか難しいでしょう。

公立中高一貫校に受かるためには、一日にどのぐらい勉強したらよい?

公立中高一貫校に受かるためには、一日にどのぐらい勉強したらよい?
公立中高一貫校合格を目指すなら、どのぐらいの勉強時間が妥当なのでしょうか。

個人差はあるが、一日4~5時間が目安

「一日にどのぐらい勉強したらよいか」という問いにはっきりした正解はありません。その子供の現時点での実力によって大きく変わってくるためです。
ただ中学受験を目指す子供は私立であれ公立であれ、一日のほとんどの時間を勉強に費やします。睡眠時間だけはしっかり確保しないと効率が悪くなりますから、だいたい4~5時間程度を勉強時間とする子供が多いです。
中には日が変わる時間まで勉強漬けという子供もいますが、体力が続かず居眠りしてしまっては意味がありません。効率が悪いので最低でも六時間、できれば八時間ぐらいを目安に睡眠はとりたいものです。もっとも、睡眠時間は個人差が大きいので、自分の体のリズムに合った生活リズムを採用しましょう。

塾や家庭教師サービスを活用している場合

塾や家庭教師サービスを利用している場合の毎日の学習リズムについて紹介します。

塾の場合

塾に通いながら、一日4~5時間勉強しようとすると思いのほかタイトです。そもそも、通塾するのに時間がかかります。学校から帰り次第、塾に来て問題をこなし、弁当を食べて自習室に居残り。帰宅後入浴し、一息つき、見直しをしてから眠るなんて生活も珍しくありません。

家庭教師の場合

家庭教師をお願いしている場合も、ほぼ同様です。ただし、自習室こそありませんが、通塾時間がない分、タイムロスは少なくて済みます。
家庭教師派遣センターを利用している家庭であれば、帰宅後すぐに授業を受けて復習と宿題をこなし、夕飯を食べたあとに一息ついて、眠る前に見直しを行うといった具合です。

出された宿題をこなすだけでも大変

塾や家庭教師といった教育サービスを活用すると、先生が受検に向けて必要な勉強を絞り込んでくれます。そのため、信頼できる先生とさえ出会えれば、安心して勉強を進めることが可能です。言われた宿題や復習をきちんとこなすことで、学力は定着化していくでしょう。しかし、この「きちんと」に手こずる子供はたくさんいます。
大切なのは、勉強だけで一日が終わらないよう効率的に時間を使う習慣づけをさせることです。ダラダラと勉強して遊ぶ時間を作れない生活を繰り返していると、段々と子供の勉強へのモチベーションが落ちてきてしまいます。きちんと日々の学習をこなせるようになるにはメリハリが必要なのです。

公立中高一貫校ならではの学習に対する焦り

公立中高一貫校ならではの学習に対する焦り
公立中高一貫校受検だからこそ、学習に対して焦りを覚えるケースもあります。

私立中高一貫校と異なり難易度自体は低いが練習が必要

私立中高一貫校の問題に比べると問題自体はあっさり解けます。教科書準拠レベルですから、問題を読んだ段階で答えを予想することは比較的簡単です。
しかし、正解を答案に落とし込むのはなかなか難しく感じられるはずです。公立中高一貫校の受検では、考えの要点をまとめて文章に落とし込まなければなりません。慣れないと、時間内にこなすのはとても難しい作業です。
小学校で学んできた学習内容がどのぐらい理解できていて、応用できるのかを見るために、問題には出題者のさまざまな意図が潜んでいます。問題文を読み込む力、図や資料からデータを解読する力、課題の中から問題点を見つける力と実に多様です。
教科書準拠というと、暗記した名称ひとつをポンと答える問題が想像されがちですがそうではなく、文章に要点を落とし込んで答えなければなりません。

一問解くだけで長い時間がかかる

公立中高一貫校の受検問題は一問一問時間がかかります。それもそのはずで、記述問題がメインなので、一問ごとにちょっとした作文を書くような作業になるのです。文章を書くことに慣れていない子供にとっては負担がかなり大きくなります。
個別指導塾の講師あるいは家庭教師から一時間半にわたる指導を受けたとしても、実質三問だけ解いておしまいなんてケースも珍しくありません。先生が丁寧な添削でもって、生徒にフィードバックをすればするほど、どうしても時間はかかります。
そのため、家庭側は遅々とした進み具合に戸惑い、「このままで大丈夫なんだろうか」と不安に駆られることが多いようです。もし、担当の塾講師や家庭教師が、長期的スパンでのスケジュールを提示していないようであれば、一度説明を求めたほうがよいでしょう。
家庭と見通しを共有するのも先生の仕事です。それができていない先生は、場当たり的な指導をしていると思われても仕方ありません。

多様なテーマを取り扱う作文試験がある

字数やテーマの傾向は学校によって異なりますが、作文試験があるのも公立中高一貫校ならではの特徴です。適性検査だけではなく作文試験の対策もしなければならないため、ここでも文章を書く能力が求められます。また、多様なテーマに対応するためには、常日頃からさまざまな情報にアンテナを張っていないといけません。

公立中高一貫校は一校しか受けられない

公立中高一貫校は一校しか受けられないため、学習におけるプレッシャーは相当なものです。焦るのも無理はありません。

公立中高一貫校の受検は全校同日のため併願できない

公立中高一貫校の受検は一律で同日に実施されます。そのため、公立中高一貫校を複数受ける選択肢はありません。落ちた場合は地元の学校に通うのが基本です。おまけに公立中高一貫校の倍率はとても高く、首都圏ではだいたい五倍以上。つまり、5人受けても4人は確実に落ちているのが現状です。

併願するなら適性検査を導入している私立中高一貫校に

公立中高一貫校を目指す家庭の中には、私立中高一貫校と併願する家庭もあります。ただし、その場合多くは「適性検査を導入している私立中高一貫校」を受験することになります。公立中高一貫校は適性検査を導入していない私立中高一貫校とは併願しづらいのです。問題の傾向や難易度が全く異なるため、必要な勉強も全く異なってきます。

塾や家庭教師といった教育サービスにおいて、私立中高一貫校の受験コースが早い時期から設けられているのは、それだけ問題の難易度が高く、多くの勉強量を求められるからです。一方、公立中高一貫校は公立中高一貫校で独自の対策が必要となります。
それでは適性検査を導入している私立中高一貫校なら、公立中高一貫校と併願するにあたりなんの問題もないのでしょうか。東京都では、2021年度は79校が適性検査を導入しています。なぜ、私立中高一貫校で適性検査を導入する学校がこんなにもあるのでしょうか。

適性検査を導入している私立中高一貫校の多くは「公立中高一貫校に落ちた優秀な子供を獲得したい」と考えています。つまり、現時点では進学校ではなく、進学校を目指している学校なのです。偏差値もあまり高くはありません。ただし、私立中高一貫校ですから当然、学費は高くつきます。併願するなら、そうした条件に納得できるかどうかが問われます。

私立中高一貫校から志望校変更する場合も油断大敵

私立中高一貫校から志望校変更する場合も油断大敵
私立中高一貫校受験を目指していて、授業がハードになってくる5年生の夏前あたりで「このままだと合格は難しいかもしれない」と気づき、公立中高一貫校に路線変更するケースもたまにあります。

私立中高一貫校受験では、難易度の高い問題をハイペースにこなしていく必要があります。そのため、子供が授業についていけなくなるケースは多いです。
転塾したり家庭教師にフォローをお願いしたりして持ち直しを図る家庭もあれば、進路自体を見直して、私立中高一貫校ではなく公立中高一貫校を第一志望に据える家庭もあります。実際、公立中高一貫校に進路変更したことで、学習が軌道に乗る子供もいます。

ただ、「問題の難易度が下がったから、子供の勉強時間を減らして大丈夫」と誤解しているケースをたまに見かけますが、これは誤りです。私立中高一貫校から公立中高一貫校に志望校を切り替えたとき、実質的に有利なのは「問題の意図を読み解くための知識が多い」という点のみになります。もちろん、その一点だけでも大きなアドバンテージにはなりますが、適性検査に受かるためには、よく考えて自分の意見を整理し、文章として相手に伝える力を養わなければなりません。
子供にも「今後はじっくり考えて書く練習が必要だよ」と伝えて、レベルアップに時間を割いていきましょう。

一問一問時間をかけて解くことに子供が飽きたら

一問一問時間をかけて解くことに子供が飽きたら
子供は短い時間で達成感を得たがる傾向にあります。それにもかかわらず、一問一問を解くのにかかる時間が長いとうんざりして「もう勉強したくない」と言い出す子供が出てきます。その場合、ステップを小分けにしてみるとよいです。
たとえば、問題を読み終えて「ちゃんと読めたね。問題の意図はわかる?」と尋ねて説明させます。内容が合っていれば「よく理解できているね」と声をかけてひとつ課題達成です。
次に、解答に書くキーワードをピックアップさせて、過不足がないようであればそこで「キーワード、正解だよ。よく理解できているね」と認めてあげましょう。「今度は今のキーワードを落とし込んで解答できるかな」と次のステップを促します。ステップを小分けにすると子供も自分のやっている内容に対して見通しが立ちやすく、イライラが減るのです。

細かなステップ毎に達成感を持たせる
  • 問題の意図を理解した時点
  • 解答に必要なキーワードを見出した時点

集中しづらい子供には、メリハリをつけて、解答の字数が多い問題、字数が少なめの問題を交互に解かせるのも手でしょう。また、問題集をいつまでにどこまで終えるか長期的にも短期的にも目安をつけて、勉強机に張り出しておくとよいでしょう。少しゆとりをもった計画にしておくとよいです。目の前の問題に時間がかかっていても、計画の範囲内だとわかれば親子ともに安心できます。問題集は全問を完全に理解できるまで、間違えた箇所を徹底的にやり直しましょう。間違えた問題には、解いた日付けを書き込んでおくとわかりやすいです。

公立中高一貫校受検に臨む子供が集中できるような工夫を

公立中高一貫校受検に臨む子供が集中できるような工夫を
公立中高一貫校受検に臨む場合、一日4~5時間ぐらい勉強している子供が多いです。学校に通ってこれだけの長い時間、勉強をしようとするのは大変ですが、睡眠時間だけは十分に確保しましょう。本人のストレス解消ができるよう遊ぶ時間もスケジュールに落とし込んであげてください。残り時間は、極力集中して学習できるよう工夫します。
問題を解いている途中で、子供の集中力が途切れてしまいやすいのが公立中高一貫校受検の特徴です。問題の途中で手が止まると、設問を読み直すところから再開するはめになり、タイムロスが大きくなります。時間のかかりそうな問題に取り組む際は、小さな達成をひとつずつ褒めてあげてください。塾や家庭教師を活用している場合も、子供の集中力が怪しいようであれば、「スモールステップ方式で」とお願いするとよいでしょう。
公立中高一貫校受検は競争率が高く、落ちることへの不安が常に付きまといます。焦りから勉強が手につかなくなっては大変です。私立中高一貫校との併願をどうするかは早いうちに親子で検討して、ビジョンを共有することをおすすめします。


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