公立中高一貫校に受かる子はどんな子?入試の傾向と対策を知ろう

公立中高一貫校に受かる子はどんな子?入試の傾向と対策を知ろう

中学受験において人気なのは、私立中高一貫校だけではありません。公立中高一貫校もまた人気を集めています。公立中高一貫校の倍率は高く、毎年激戦です。この記事では、公立中高一貫校に合格するためには、どうすればよいのかを紹介します。

公立中高一貫校はなぜ人気があるの?

公立中高一貫校はなぜ人気があるの?
公立中高一貫校が人気のある理由は以下のとおりです。

公立中高一貫校の充実した教育内容が人気

公立中高一貫校の制度は、第142回国会において成立した「学校教育法等の一部を改正する法律」によって設けられました。この法律が施行されたのは1999年4月1日です。法律の目的は、教育の多様性の一層の推進、生徒の個性を重視した教育の実現などにあります。
実際、公立中高一貫校の教育は先進的で個性的です。公立というと一律的な教育のイメージが強いですが、公立中高一貫校にそれは該当しません。各学校ごとに実験的な試みがなされています。加えて、私立中高一貫校のように補講が手厚い学校が多く、子供への教育的サポートが充実している点で安心です。

費用の安さが人気

よく知られているとおり、私立の中高一貫校は学費が高いです。具体的に中学校の費用で比較してみましょう。
平成30年度の文部科学省「子どもの学習費調査」によれば、公立中学校の学校教育費は13万8,961円。私立中学校の学校教育費は約107万1,438円です。
公立中学校では教材費や給食費などがかかります。私立中学校は授業料自体が高く、結果、公立の7.7倍もの費用がかかります。合格するためには塾や家庭教師の費用も考慮しなければならないですし、経済的に余裕のある家庭でないと通わせるのは難しいです。
一概には言えませんが、私立中高一貫校に入れるのであれば、一般的に世帯年収700万円以上が望ましいと言われています。公立中高一貫校であれば、少なくとも私立中高一貫校よりは費用を気にせず通うことが可能です。ただし、地元の学校に通うのでなければ、交通費を予算に組み込んでおく必要があります。

公立中高一貫校の試験内容って?

公立中高一貫校の試験内容って?
公立中高一貫校を受けることを「受検」といいます。私立中高一貫校の「受験」とは方向性がまるで異なる試験内容です。
合否を決める要素は報告書適正検査作文面接の四つ。以下順に解説します。

報告書

公立中高一貫校だけではなく、私立中高一貫校においても報告書は必要です。報告書は、私立中高一貫校では主に調査書と呼ばれています。記されているのは、小学校から見た子供についての情報です。
私立中高一貫校では受験の合否において、報告書(調査書)はあまり重視されません。そのため、内申点が取れないタイプの子供たちに私立中高一貫校は人気があります。
たとえば、発達における特性の影響で、定型発達の子供たちと同じ評価基準ではかられると、内申点が下げられてしまう子供は少なくありません。そうでなくても、まだまだ内申点には先生の主観が反映されがちで、先生受けの悪い子供には不利なケースもあるのです。
そうした子供を持つ家庭は、あらかじめ私立中高一貫校に入っておけば高校受験で不利になる状況を回避できます。
ところが、公立中高一貫校の場合は私立中高一貫校と状況が異なります。報告書が重視されるのです。たとえば、東京都立であれば、「八割を試験、二割を報告書」といった比率で重視する学校が多くあります。中には「三割は報告書」なんて学校もあるほどで、報告書での評価が悪い時点で合格は難しいのです。そのため、公立中高一貫校を志望するなら、小学校での学習や授業態度、出欠などを疎かにはできません。合否を左右しかねない要因となるのです。

適性検査

公立中高一貫校を目指す家庭の中では、私立中高一貫校と併願できないかと考える家庭もあることでしょう。その際にネックとなるのが適性検査です。私立中高一貫校の受験問題と見比べれば一目瞭然、出題傾向が全く違います。
そもそも公立中高一貫校の適性検査は、教科横断型の出題です。国語・算数・社会・理科といった四科目の学力試験ではないのです。それぞれの科目の知識が不要ということではありません。むしろ、小学校で学習した知識を前提とした上で、科目の枠にとらわれない柔軟な思考力が問われるのです。
適性検査の一番の特徴は、記述問題が重要視されていることです。自分で考えて文章にして書けるかどうかが大切です。なお、2015年から東京都立中高一貫校の問題は一部共通化されています。

作文

ある文章についての感想や意見を書きます。学校によって字数は大きく異なりますが、少なくとも400字以上をささっと書く力が必要です。ただよい文章が書ければOKではなく、制限時間内に文章を書ける力があるかどうかも問われます。

面談

面談とひと口に言っても学校によって形式は大きく異なります。個人、集団などさまざまです。

公立中高一貫校の受検対策ってなにをやればよいの?

公立中高一貫校の受検対策ってなにをやればよいの?
公立中高一貫校の受検対策について具体的に紹介していきます。

受検対策っていつ頃から始めるべき?

小学5年生ぐらいから始める家庭が多いです。塾や家庭教師や通信教育といった、各種教育サービスも、首都圏の私立中高一貫校のように小学3年生の2月からではなく、5年生から開始のところが多くあります。ちなみに、志望校に提出する報告書において、チェック対象となるのも主に5.6年生の内容です。

公立中高一貫校の受検対策は塾や家庭教師が必要?

公立中高一貫校の出題レベルは、学校で勉強した内容に準じています。出題の仕方は特徴的ですが、私立中高一貫校のように難易度が高く問題自体を理解することが難しいような出題レベルではありません。ですから、家庭だけで受検対策を考えるケースもあるでしょう。
ただ、その場合は、採点する親の学力がある程度求められます。基本的に記述問題なので答えとして書かれている文章が、要点をおさえているかどうかを的確に見極めなければなりません。高いスキルがあり、時間的余裕があるのであれば、家庭だけで受検を目指すのもありです。
一方、家庭教師は、公立中高一貫校対策に特化したコースを用意しているところが多くあります。受検に関する情報量ノウハウも多く有しているため、頼りにするのもよいでしょう。

適性検査に必要な三つの力ってなに?

適性検査に必要とされる能力を大きく三つに分類しました。以下、紹介します。

読み解く力

問題文を読む段階で引っかかってしまう人は、本や問題集を通して長い文章に慣れる必要があるでしょう。なお、文章だけではなく図表を読み解く力も求められます。

考える力

読む力の次に必要となるのが考える力です。考える力は何もないところからは湧きません。まず、最低限、土台となる基礎知識を固めておく必要があります。公立中高一貫校を受検するなら、学校の授業内容を確実に理解しておいてください。
激戦の公立中高一貫校受検で、合格を勝ち取れる子供は限られています。学校の授業についていけない状態で合格はまず難しいです。

言語化する力

公立中高一貫校の受検において、一番難しいポイントはここです。恐らく私立中高一貫校受験をめざしている子供は公立中高一貫校の問題を見て「簡単」と言います。しかし、いざ挑戦すると思ったように上手く解けず困惑するはずです。それもそのはずで、問題自体は簡単でも、その答えを言語化する作業は容易いものではありません。
実際、小学校高学年で読みやすい文章が書ける人間はひと握りです。だいたいの子供は一文が冗長で、接続詞の使い方がおかしく、文体が統一できていません。書きたい内容が盛りだくさんで、一文に内容を詰め込み過ぎてしまうのです。書いているうちに子供は自分がなにを書こうとしていたのかよくわからなくなります。結果として、やたらと句点を多用して文章をつなげてしまい、主語と述語が噛み合わない文章が出来上がるのです。
説明をするのに、相手に伝わらない説明では問題ですし点数につながりません。そのため、解答を徹底的に添削してもらう必要があります。塾や家庭教師を活用するのならよいですが、家庭学習だけで望む場合、がこの部分を担わなければならないため大変です。

適性検査を乗りきるためにやるべきこと

適性検査でよい結果を出すためにはどうすればよいのでしょうか。

問題を解いたら細かく添削

適性検査を乗り切るためには、基礎知識をしっかり身に着けた状態で、自分なりの問題意識や広い視野を持ち、読み手に伝わる論理性をもって、文章を展開していかなければなりません。
問題集に挑み、問題数をこなすことも大切ですが、それ以上に大切なのがフィードバックです。答えとして書いた文章のどこがいけなかったのかについて、学んでいきましょう。「このキーワードが入っていなかった」といった理由ならだいたいの子供がすぐ納得します。しかし、「この文章じゃ伝わらない」と漠然と指摘されてもピンとはきません。どこがどう伝わらなかったのか、丁寧な添削でのフィードバックが必要です。

添削のポイントを子供と共有する

添削時には、子供の文章の癖を洗い出して指摘してあげましょう。たとえば、文章が冗長だと感じたら、「一文一文をもっと短くして」と伝えて、実際に子供の書いた文章をコンパクトにしてあげます。指示だけを伝えるのではなく、最初は見本をいくつか提示してあげましょう。
接続詞を使い過ぎている子供も多くいるので、不必要な箇所は削ってあげてください。自分で音読させて「書いた文章に引っかかる箇所はないか」と尋ねてみてください。自分で自分の文章を見直して、手直しできるようサポートしてあげるとよいです。

どんなタイプの問題が出るのかを知ろう

傾向と対策をまとめた問題集を入手して、まずはどんな問題が出ているのかを知りましょう。科目別ではない試験というのは、子供にとって馴染みがないため、最初はピンとこないかもしれません。実際、公立中高一貫校の受検対策を始めたばかりの子供は、「問題の意味がよくわからない」「なにをどう書けばいいのか」「学校の勉強と違ってなんでこんなに面倒くさい問題ばかりなの」と嘆きがちです。もし、文章がなかなか頭に入らない様子だったら、最初は子供に問題文自体を音読させるようにしてください。徐々に慣れてきます。

公立中高一貫校の受検対策のポイント
  • 家庭学習だけでも対策は可能だが親にも学力が必要なのと情報量やノウハウを集めることが重要
  • 必要な力は「読み解く力」「考える力」「言語化する力」の三つ
  • 対策に一番重要なのは添削などの「フィードバック」
  • 読書習慣と根気を養う環境づくりを小さい頃から心掛けることが大事

公立中高一貫校に受かる子供はどんな子供?

公立中高一貫校に受かる子供はどんな子供?
公立中高一貫校に受かる子供はどのようなタイプが多いのでしょうか。

国語が得意、本が好きで想像力のある子供

問題を読み解き、文章にまとめていく作業が要求されるわけですから、国語が得意だったり読書好きだったりすると、問題に慣れるまでの期間が短くて済みます。適性検査でも作文試験でも大きく力を発揮できるでしょう。読書を通して培った、想像力発想力の豊かさも強みです。公立中高一貫校への受検を考えているのであれば、小さいうちから読書習慣をつけておいてはどうでしょうか。学力の下地作りになるはずです。

途中で問題を投げ出さない子供

公立中高一貫校で出題される問題は、一問答えるのに時間がかかります。時間のかかる問題に対してイライラしてしまう子供は少なくありません。記述問題が好きな子供は、かなり少数ですから「もー、やだ!長すぎる!やりたくない!」というのが当然の反応だとも言えます。途中で問題を投げ出さず、粘り強く取り組める子供に向いているでしょう。

公立中高一貫校の出題傾向を知り、合格を勝ち取ろう

>公立中高一貫校の出題傾向を知り、合格を勝ち取ろう
私立中高一貫校と比べれば公立中高一貫校の問題自体の難易度は決して高くありません。そのため、受検対策の期間も私立中高一貫校受験よりも短期間で済みます。しかし、それは公立中高一貫校の受検が簡単であることを意味している訳ではありません。
先進的で充実したカリキュラムであるにもかかわらず学費が安いため、公立中高一貫校の人気は右肩上がりです。2020年の首都圏の学校だけを見ても、だいたい5倍は超えています。中には千葉県立東葛飾中学校のように10倍以上の倍率だった学校もあるぐらいです。
的確な添削で子供の力を伸ばしていきましょう。粘り強く頑張れる子供であれば、最初は出題形式に戸惑っていても、いずれポイントを押さえた答えを書けるようになります。
そのために、塾や家庭教師といった教育サービスが必要であれば、ぜひ活用してください。添削でのフィードバックにどれだけ時間を割けるかが大切なので、集団授業の塾であれば少人数制をとっているところがよいです。実績のある個別指導塾や家庭教師も効果的でしょう。


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