中学受験を目指す上で志望校を見学したいのなら、文化祭はよい機会です。学校の校風や雰囲気を直に知ることができます。この記事では文化祭を通して志望校見学をするにあたって気をつけたい点を紹介します。
文化祭に行くメリットってなに?
文化祭に行くメリットにはどんなものがあるのでしょうか。見ていきましょう。
志望校見学って行かなくちゃダメ?
偏差値やパンフレットからの情報だけで志望校のイメージを作り上げてしまうのは、あまりおすすめできません。学校に実際に足を運んでみることで、通学路の様子や、校風、設備の様子などがわかります。いざ通う段階になって、「こんなはずじゃなかった」と後悔しないよう、必ず志望校見学には時間を割くようにしましょう。
学校説明会とはここが違う!
「どうせ学校説明会には行くんだし、文化祭までは行かなくても」と考える保護者も多いかもしれません。しかし、学校説明会は保護者のみを対象としていたり、保護者と六年生のみを対象としていたりするケースが多いです。つまり、説明会だけだと、子供が受験生になるまで詳しい情報が得られないのです。加えて、説明会は改まった場であり、日頃の学校の雰囲気まではよくわからないでしょう。その点で文化祭は、低学年のうちから親子で参加できることがほとんどですし、生徒たちの生き生きとした姿を見ることができます。
子供が楽しめるイベントである
文化祭はクラスや部活ごとに出し物があり、子供が楽しめるお祭りのようなイベントです。中学受験において、「志望校は面白い場所である」という認識を子供が持てることはとても大切でしょう。
なぜなら、中学受験は多くの場合、親主導で進められます。親が子供にどういう教育を受けてほしいか、どういう環境に身を置いてほしいか、どういう進路の可能性を残しておきたいか、などを考えて決めることがほとんどで、子供自らが「受験したい」と言い出すことはほとんどありません。そのため、子供は受験勉強の中で、自分のモチベーションを見失ってしまいがちです。
受験において、「どうしてもこの学校に入りたい」という熱意はとても大切です。長い期間勉強を続けるためには、子供自身が主体的に勉強に取り組む必要があります。「言われるがまま勉強する」タイプの子供は途中で息切れしてしまいかねません。
ポイント
早い段階で学校を見ておき、自ら進んで「この学校に行きたい」と思えるのが理想です。
志望校見学にはどのタイミングで行くのがよいの?
文化祭にはどのタイミングで行くのがよいのでしょうか。
志望校が決まっていない低学年~四年生がチャンス
「志望校が決まっていないうちから行く意味なんてあるの?」という声もよく聞きますが、文化祭などの行事を見に行くのは早い時期をおすすめします。その学校によいイメージを持てれば、勉強をする上でのモチベーションアップになるためです。
低学年のうちから遊びに行ってもよいですし、四年生ぐらいになってから行くのもよいでしょう。六年生になってしまうと、受験本番に向けて予定がぎっしりになってしまい、行きたいけれど行けないという状況に陥りがちなので、五年生までに一度は行くことをおすすめします。
中学受験はどうしても、親主導で進めることが多いため、子供のモチベーションが置き去りになるケースが少なくありません。子供自身が「あの学校にどうしても行きたい」と感じる経験が必要です。文化祭をはじめ学校行事への参加は有効な方法といえるでしょう。
何校ぐらい行くのがよいの?
よく「出願7校、受験5校」といわれますが、できれば出願する学校の文化祭には行っておきたいものです。ただし、それは四年生までの話で、五、六年生になると勉強が本格化するため、そこまでの数をこなすのは難しいです。志望校が決まりきっていないうちに行ったほうが、どこを志望校にするかの判断材料を集められます。実際に見て「イメージと違う」と感じて受験をやめるケースもあるわけで、出願する数よりも多くの学校をチェックしたほうがよいでしょう。
何回も行ってもいいの?
志望度の高い学校には、複数回行くことをおすすめします。一度行っただけではどうしても記憶が薄れてきますし、モチベーション維持のためには何度か足を運ぶとよいでしょう。また、年度によって学校の雰囲気も多少は変わっていくものです。そういう意味でも、第一志望、第二志望ぐらいには何度か行っておくことをおすすめします。
知っておきたい文化祭見学の基本!
今後、文化祭見学を検討している家庭に向けて、基本情報を紹介します。
まずは文化祭のスケジュールを確認!
気になる学校があれば、ホームページで文化祭のスケジュールをチェックしておくのがよいです。予約制・チケット制を採用している学校が多いので、どのぐらい前から受付が始まるかをあらかじめ知っておいてください。せめて志望度の高い学校には確実に行けるように早め早めに動くことが肝心です。
文化祭にはどんな格好でいけばよい?
中学校の文化祭はカジュアルな催しではありますが、あまりラフな格好はおすすめできません。学校見学の一環として、いわゆる「きれいめカジュアル」を意識しましょう。
文化祭では具体的にはどこを見たらよいの?
文化祭に行く前に、部活のラインナップをチェックしておきましょう。入りたい部活があるかどうかを確認し、その部活が出し物をしているならぜひ見に行ってください。活気があるかどうか、先輩となる人たちの雰囲気がよいかどうかなどをチェックしておくことをおすすめします。
生徒だけではなく、先生の様子も見ておきたいところです。生徒に対してどういうコミュニケーションの取り方をする学校なのかを見ておきましょう。見回りをしている先生の様子をチェックしてみましょう。
生徒や先生の雰囲気だけではなく、保護者の雰囲気も学校ごとに差があります。もちろん、通うのは子供なので子供に合うかどうかが最優先ですが、保護者の様子も知っておくとよいでしょう。
設備も大切です。校舎や施設についてはホームページに詳しい説明を載せている学校がほとんどなので、事前に目を通しておいて位置関係を把握してください。見たい施設が公開されているようであれば、見学しておきましょう。私立中学の施設は、学校ごとに力を入れているポイントに差があります。運動部に力を入れている学校であればグラウンドやプール、テニスコートなど、文化部に力を入れている学校であれば実験室や天体ドームなどさまざまな施設を備えています。なにより毎日を過ごす教室はぜひ見ておきたいところです。
通学路の確認も合わせて行っておこう
登下校の時間に行くわけではないでしょうから、あくまで経路の確認になりますが、街灯の有無や交通量など、危ない場所がないかどうかのチェックは大切です。また、登下校が長すぎて通うだけで疲れてしまう学校は子供にとって負担となります。
見学したあとはメモを残そう
文化祭を複数見学していると、だんだんと記憶が混ざってきてしまいます。そうならないよう、見学したあとは簡単でよいので、印象に残ったことをメモしておきましょう。親だけではなく子供の印象も聞いて書き出しておいてください。意外と親子で意見が大きく違うケースもよくあります。メモは残しておいて、翌年再び足を運んだときにイメージが変わっていないかどうか確かめるために確認するとよいです。
こんなNG行動はしない!
文化祭見学でのNG行動にはどんなものがあるのでしょうか。
車を近隣に停めない
文化祭などの大きなイベントで、トラブルになりやすいのが駐車場の問題です。許可されていないのに近隣に駐車して、学校にクレームがいかないようにしましょう。大きなイベントではこの手のマナー違反をする来客は必ずいて、学校側にとっても頭の痛い問題です。翌年以降の運営にかかわるので、「公共交通機関の利用」など学校側の提示しているルールを確実に守ってください。
学校の比較をしない
文化祭を回っていると、どうしても頭の中で他校と比較してしまいます。それ自体は悪いことではなく、むしろそうした比較を通して志望校の優先順位をつけられるので必要な作業です。しかし、その感想を学校の中で口にしてしまうのはマナーとしてNGでしょう。
「ここは〇〇中学校のほうがよかったね」「〇〇中学校に比べると校舎が古いね」「この学校、他の学校に比べて派手な子が多くない?」などと悪びれなく比較を口にする見学者の姿はよく目撃されています。
その場で子供と感想を共有したくなる気持ちはわかりますが、そうした話は家に帰ってからするようにしましょう。特にグループで来ている場合は、ついつい気が緩んでしまいがちです。誉め言葉でないのなら、その場では口に出さないよう心がけてください。
在校生に受験のアドバイスを求めない
在校生相手に受験の経験談を聞こうとしたり、アドバイスを求めたりする保護者は、「文化祭あるある」です。在校生と交流できたタイミングで、つい「受験大変だった?」「どこの塾に通っていたの?」「併願どこにした?」「第一志望じゃなくて滑り止め?」「うちの子、偏差値が足りなくて。変なこと聞くけど、偏差値いくつだった?」などと踏み込んだ質問をしてしまう保護者の話を聞きます。
文化祭はあくまで在校生のイベントであり、見学をしに行っている側があれこれ質問をするイベントではありません。知りたいことがたくさんあるのは当然ですが、尋ねるならもう少し当たり障りのない質問にしておきましょう。「学校楽しい?」程度ならコミュニケーションの範疇ですが、受験に焦点を絞って自分の知りたい情報だけを得ようとするのは避けたほうがよいでしょう。
あくまで公開されている場所を見学する
文化祭ではあくまで公開されている場所の見学に留めて、それ以外の場所を許可なくチェックするのはやめましょう。気になるからといって許可されていない場所にまで踏み入ってしまっては、学校側も厳しく対応せざるを得なくなります。
文化祭以外にも外部から参加できるイベントは?
文化祭以外にも外部から参加できるイベントはいろいろあります。ほとんどの学校で行われている学校説明会はもちろんですが、他にも学校の個性を感じられるイベントは多いです。
たとえば、獨協中学校の「学校体験会」では体験授業、在校生とのふれあいイベント、入試相談などが用意されています。小学五、六年生を対象にしたイベントです。それとは別に、「部活動体験会」も開かれ、各部活の体験ができる場となっています。入りたい部活がある子供には絶好の機会です。
また、「オープンスクール」を実施している学校もたくさんあります。たとえば、明治大学付属中野中学校では施設や普段の授業を公開する日を設けています。特に授業の質や雰囲気は入学するまでなかなかわからないため、こういう機会は貴重です。
光塩女子学院中等科では「親睦会(バザー)」を行っています。他にも体育大会をはじめいろいろなイベントが各学校で実施されていますが、いずれも予約制をとっている学校が多いので、締め切りに間に合うよう応募しなければなりません。
文化祭は志望校を考えるよい機会になる
文化祭は普段、入れない学校の中に入れる貴重な機会です。生徒たちが学校行事にどう取り組んでいるのか、雰囲気が直に伝わってくるため、志望校を検討する上で参考になります。ぜひ高学年になる前から、子供と一緒に回ってみてください。学校について知ることは、子供のモチベーションにもよい影響をもたらすでしょう。
ただし、学年が上がれば上がるほどスケジュールはタイトになってくるので、あくまで負担にならない範囲にしてください。出願する学校の数より少し多めに回れるのが理想ですが、難しければ大丈夫です。予約制やチケット制の学校が多く、早めにチェックしておかないと参加できなくなるケースもあります。気になる学校はスケジュールをあらかじめ確認しておくことをおすすめします。
残念ながら、受験情報を集めることを優先し、文化祭で生徒にあれこれと踏み込んだ質問する保護者もいます。文化祭の主役はあくまで在校生だということを念頭に置きましょう。他にも、当日車で行ってもよいかどうかなど、学校側の提示しているルールをチェックしておいてください。