東京都立桜修館中等教育学校は、社会の中のリーダーとなるべき人間を育成することを目指す中高一貫校です。この記事では、東京都立桜修館中等教育学校を目指す家庭に向けて、適性検査の出題傾向と勉強法を紹介します。
そもそも東京都立桜修館中等教育学校ってどんな学校?

東京都立桜修館中等教育学校の歴史は、昭和4年に設立された府立高等学校(尋常科4年、高等科3年の7年制)に始まります。昭和24年4月に男女共学となり、同年12月には東京都立大学附属高等学校と名を改めました。今の東京都立桜修館中等教育学校という名で開校したのは平成18年4月です。
語学・国際教育と学習環境の充実
「国語で論理を学ぶ」「数学で論理を学ぶ」を掲げ、教科融合型・文理横断型の学びを展開しています。五年生で5000字の研究論文執筆、六年生で論文の要旨を英語でまとめるという取り組みで知られ、論理的な思考力・表現力を伸ばすカリキュラムを採用しています。
語学にも注力していて、ドイツ語、フランス語、スペイン語、中国語、韓国語から第二外国語を選択できる幅広さも東京都立桜修館中等教育学校ならではです。国際理解への取り組みを大切にしていて、全員参加のプログラムと任意参加のプログラムの両方が多様に展開しています。全員参加のプログラムとして挙げられるのはTokyo Global Gateway、ブリティッシュヒルズ、台湾修学旅行などです。また、学校交流で訪問受け入れなどを行っています。任意参加のプログラムとしては、グローバルスタータープログラム、オーストラリア海外語学研修、海外大学リーダー育成アメリカ研修などが挙げられます。
他にも二・三年生の英語、四・五年生の数学での少人数制・習熟度別授業の導入や、五年生以降の選択授業、年間二十回におよぶ土曜授業、六十講座ほどが設けられる夏期講習、卒業生によるチューター制度など、さまざまな教育的取り組みが実施されています。学校行事も盛り上がりを見せていて、クラスマッチや記念祭、合唱コンクールなど生徒の主体性を育む催しを行っています。
進学実績とその背景
六年間の教育を経て、卒業生たちが選ぶ進学先はさまざまです。2025年度の合格実績を見ると、東京大学8名、京都大学3名、一橋大学3名、筑波大学1名、早稲田大学56名、慶應義塾大学33名など、さまざまな大学名が並んでいます。
東京都立桜修館中等教育学校の入試概要

東京都立桜修館中等教育学校の入試について見ていきましょう。
2026年度の入試
一般入試は、2026年2月3日実施で、出願期間は2025年12月18日から2026年1月16日17時までです。なお、いざというときは「インフルエンザ等学校感染症罹り患者等に対する追検査」という選択肢もあり、検査日は2026年2月13日、出願期間は2026年2月4日と2月5日です。
東京都立桜修館中等教育学校では、報告書および適性検査ⅠⅡの結果を受けて合否を判断します。
2025年度の入試倍率
2025年度は募集人員160名、応募人員612名で、最終応募倍率は約3.8倍でした。2024年度は160名の募集人員に、応募人員が705名であったため、最終応募倍率は約4.4倍でした。なお、最終応募倍率は小数点第二位以下を四捨五入しています。
| 入試年度 | 応募人員 | 募集人員 | 最終応募倍率 |
|---|---|---|---|
| 2025年度 | 612名 | 160名 | 約3.8倍 |
| 2024年度 | 705名 | 160名 | 約4.4倍 |
東京都立桜修館中等教育学校における適性検査の出題傾向

東京都立桜修館中等教育学校の適性検査における出題傾向は以下のとおりです。
適性検査Ⅰは読解力が必須
適性検査Ⅰは試験時間45分、大問一つ、小問三つで構成されています。主に読解力を問われる内容です。問題を挟まずに二つの文章が連続して提示されるため、それぞれを読み込んだあとですべての問題を解き進めていきます。
論理的な思考や適切な表現力が問われ、文中から読み取った内容をもとに記述問題を解かなければなりません。三つしかない小問の中で、解答用紙のスペースの大半を占めるのは、自分の考えを400字以上500字以内にまとめるという、作文形式の問題です。当然、配点の比重も高いので、得点につながる構成と表現を心がけることが重要となります。
適性検査Ⅱは資料から情報を適切に読み取る
適性検査Ⅱは試験時間45分で大問三つ、小問七つで構成されています。分野としては理科や算数、社会などから横断的に出題されている印象です。資料から情報を読み取る力や、課題について思考し判断する力が求められます。
また、提示された条件を整理し、論理的に問題を考察し処理する力、あるいは資料の相互関係を把握し、分析し、その結果を表現する力が欠かせません。実験の結果を考察する力も求められます。
- 適性検査Ⅰでは、複数の文章を読み比べながら内容を正確に理解し、自分の考えを適切な言葉で表現する力が求められる
- 適性検査Ⅱでは、資料やデータから情報を読み取る力、条件を整理して論理的に考察する力が問われる
東京都立桜修館中等教育学校に合格したい。どんな勉強が効果的?

東京都立桜修館中等教育学校に合格するためには、どういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
読み取る力を身につけよう
適性検査Ⅰは国語タイプの問題なので、読解力を身につけることが大切です。読解文がふたつある場合、一般的には物語文と説明文の組み合わせが多いですが、桜修館中等教育学校では例年、説明文がふたつ出題されます。
説明文はやや難しい内容もありますが、長さは比較的コンパクトです。スピーディーに読み込むことより、じっくり内容を理解することが求められます。設問で問われるのは文章の意味をきちんと読み取れているかどうかです。たとえば、指示語がなにを指しているのかであったり、文章がなにを示しているのかであったりを読み取る必要があります。
記述力を身につけよう
適性検査Ⅰでは説明記述および作文形式の問題が出題されます。どちらも書く力が欠かせません。説明記述では、さまざまな長さの文章を書くことが求められますし、作文形式の問題では400字以上500字以内の文章を書く必要があります。指定字数内に質問の意図を汲んだ答えを落とし込めるようにしましょう。
正しく書き手の意図が伝わる文章を書くのは容易ではありません。まして、長めの文章で仕上げなければならないとなると、より一層難しくなります。解答欄を見て、どう文章を展開していくか、構成の見通しを立てられるようにしましょう。あらかじめ段落の数を決めておくと、書きやすいです。
スムーズに書き進めるための練習をしよう
書くのが不得意な子供は作文形式の問題で、手が止まりがちです。しかし、試験時間は45分と限られているので、どんな内容にするかを考え、スムーズに書き進めなければなりません。
適性検査では、いくつかの条件やきまりが設定されます。原稿用紙の使い方と重なるきまりが多いので、あらかじめ押さえておきましょう。過去問では、第一段落と第二段落の内容がそれぞれ指定されています。自分の考えを交えることを求められるので、空いたスペースに思いついた内容をメモしておくとよいでしょう。
- 設問で問われている文章の意味や、指示語が何を指しているか、などしっかりと読み取る力を身につける
- 作文形式の問題では、どう文章を展開していくか、構成の見通しを立てる力を養う
- 空いたスペースを活用してメモを取るなどし、スムーズに文章を書けるようにする
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
情報量の多い中から問題の手がかりを読み解く
算数関連の問題は、適性検査Ⅱで出題されています。基本的に会話文形式の問題文と資料による出題なので、情報量が多いです。一般的な問題文のように要点だけがわかりやすく抽出されているわけではないので、注意して隅々まで読み込まないと、必要な要素を読み落としてしまいます。
問題を解くために必要な数字の部分を視覚的に強調するために、下線を引きながら読むといった取り組みが必要です。
図形、条件整理の問題に対応できるように
適性検査Ⅱの問題は科目を横断しての総合問題ですが、算数の要素で言うと、図形や条件整理の対策に力を入れておきたいところです。
適性検査の出題形式とも相性がよく、東京都立桜修館中等教育学校はもちろん、様々な学校でよく出題されています。適性検査問題集や過去問にある問題をたくさん解いて、出題パターンを学んでみるとよいでしょう。
考えを説明する練習を
適性検査Ⅱの解答欄は一問一問広くとられているものが多く、中には一問で一ページのほとんどを占めるものもあります。出題形式としては、考え方や解き方を式や文章で説明してみせる問題がほとんどです。いくら答えが合っていても採点者に伝わるように書けなければ失点してしまいます。広い解答欄に過不足ない情報を落とし込むためには、日頃から練習しておかなければなりません。
国語に関連する問題を扱う適性検査Ⅰはまだしも、理科や社会、算数に関連する問題で、長い記述をするのは不慣れな子供が大半です。適性検査対策において、一番時間がかかるのはこの「書く」練習です。書くのに慣れていない子供は、書くだけで精一杯で主語や目的語を抜いてしまい、読み手に伝わらない文章を作成してしまう傾向にあります。
まして、算数では、式以外で考え方を表す訓練をあまりしてきていないケースがほとんどのため、戸惑う子供は少なくありません。自分の書いた答えを塾や家庭教師の先生にチェックしてもらい、フィードバックしてもらいましょう。
- 情報量の多い問題文を丁寧に読み、必要な条件や数値を見落とさないようにする
- 図形問題や条件整理の問題を中心に、多くのパターンに慣れておく
- 書いた答案を第三者に確認してもらい、伝わる表現力を身につける
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
実験の問題が頻出
理科に関連する問題だと、たとえば、2025年度にはシャボン玉の実験、2024年度には摩擦の実験が出題されています。会話形式で実験を進めていく内容です。実験の問題は手順がこと細かに記されているため、ひとつひとつの内容を頭の中で整理しながら読むようにしましょう。
適性検査では、実験結果の理由や背景を説明記述する問題がよく出ます。説明記述も、一文で済むような端的な内容ではなく、具体的な実験結果を踏まえて書くことが多いです。理科の基本的な知識を身につけるのはもちろん、実験の流れを言葉で説明できるように練習しておきましょう。まずは口頭で説明できるようにして、そのあと書けるようにするとよいです。
図表やグラフを読み取れるようにしよう
実験の問題の出題率が高い分、図表やグラフとあわせて出る問題が多いです。図表やグラフから必要な情報を読み取れるようにしておきましょう。
また、図表やグラフに書かれている数字を使った計算問題にも対応できるようにしておきたいところです。計算して答えを求められるようにしてください。
- 実験の流れを正確に読み取り、結果と理由を説明できるようにする
- 図表やグラフから必要な情報を読み取り、図表やグラフの数値を使った計算問題にも対応できるようにする
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
教科書の知識を詰め込んでも解けない
社会関連の問題では、広く社会に関するテーマを扱います。そのため、知識を丸暗記しても対応するのは難しいです。たとえば、2025年度に出題されたのはゴミの再利用に関する問題でした。衣服の循環利用を例に考える問題で、リサイクルやリユース、廃棄についての内容です。
もちろん、学校でもゴミの再利用や環境問題について学びます。ただ、適性検査で出題されるのは、そういった知識ひとつひとつを覚えて解く問題ではありません。提示された文章や資料の中から必要な情報を読み取って、思考を整理し記述する問題です。解くための手がかりは設問の中にあるので、情報の点と点をつないで説明記述に落とし込む作業が必要です。
複数の要素をつなげて考察する
問題内では複数の資料が提示されます。まずは、問題文を読み、それぞれの資料を見比べましょう。内容を多角的にとらえ、文章にまとめる力が求められます。
問題内の情報量が多いので、どうしてもいくつかとりこぼしそうになりますが、必要な情報を押さえた文章を書けるよう練習しておくとよいです。
- 知識の暗記に頼らず、文章や資料から必要な情報を読み取る力を養う
- 複数の資料を見比べ、多角的に内容を捉える練習をする
的確に読み取る力、表現する力の育成が必要

適性検査Ⅰでは、読解力が求められます。また、読解した内容を表現する力も必要です。指定字数内での説明記述はもちろん、読解した内容に自身の考えを反映させた作文をも書けるようにならなければなりません。
適性検査Ⅱでは、ボリュームのある文章や資料から、多角的・複合的に物事を理解して、答えを解答欄に落とし込むことが求められます。会話文形式で次々と展開していくテーマを追いかけていくのは、それだけでも大変な作業です。加えて、提示された複数の資料を見比べながら、情報を読み取って解答に生かす力も欠かせません。
的確に読み取る力、表現する力を育成していかなければなりません。最初は答えを書いても読み手に伝わる文章にはなっていないことがほとんどです。主語、目的語、述語のどれかがひとつでも曖昧だと、それだけで意味の伝わりにくい文章になります。繰り返し問題を解き、塾や家庭教師の先生に添削をお願いしてください。プロの目線で足りない点を指摘してもらうことが大切です。繰り返しのフィードバックを経て、少しずつ意図のつかみやすい文章を書けるようになっていきます。
