東京都立大泉高等学校附属中学校は、国際理解教育を推進する中高一貫校として知られています。この記事では、大泉高等学校附属中学校を目指す家庭に向けて、出題傾向と勉強法を紹介します。
そもそも東京都立大泉高等学校附属中学校ってどんな学校?

東京都立大泉高等学校附属中学校は、「第一志望の進路実現」「探究の大泉~創造の泉~」「国際理解教育」の三つを掲げる学校です。これらの目標を実現するためのカリキュラムを採用しています。
進路実現のために中高一貫の六年間を通して、進路指導計画を用意しています。それぞれのコンセプトは、中一が「学習習慣と自己理解」、中二が「職業研究と職場体験」、中三が「将来構想と進路意識」、高一が「自己理解と科目選択」、高二が「大学研究と実力養成」、高三が「自己研鑽と進路実現」です。
国際理解教育においては、ブリティッシュヒルズ英語研修、オーストラリア・ニュージーランド語学研修などに参加することができます。また、長期休暇中は毎年、100近い講座を用意。生徒一人ひとりの学ぶ意欲に対して応えられるだけのカリキュラムがあります。学校行事も充実していて、生徒のリーダーシップを育成しています。
2025年度の高校卒業後の進路実績としては、国公立大学合格が45名(現役43名、既卒2名)、私立大学合格が510名(現役498名、既卒12名)です。具体的な学校名をいくつか挙げると、東京大学が現役8名、京都大学が現役2名、一橋大学が現役4名、慶應義塾大学が24名(現役23名、既卒1名)、早稲田大学が52名(現役51名、既卒1名)となっています。
東京都立大泉高等学校附属中学校の入試概要

東京都立大泉高等学校附属中学校の入試概要について見ていきましょう。
2026年度の入試
2026年度の2月3日に入試を実施予定です。インターネット出願期間は2025年12月18日から2026年1月16日まで、書類提出期間は2026年1月9日から2026年1月16日までに設定されています。なお、書類提出期間とは、出願サイトへの入力を済ませた上で、必要書類を中学校に提出する期間のことです。
試験の配点については、報告書の得点540点を300/540倍して300点に換算、適性検査Ⅰの得点100点を2倍して200点に換算、適性検査Ⅱの得点100点を2倍して200点に換算、適性検査Ⅲの得点100点を3倍して300点に換算という計算方法を採用しています。つまり換算後の数字で見ると、報告書300点、適性検査700点で合計1000点の配点です。
2025年度の入試倍率
2025年度は募集人員160名、最終応募人員590名で、最終応募倍率は約3.7倍でした。2024年度は160名の募集人員に、応募人員が667名であったため、最終応募倍率は約4.2倍でした。なお、最終応募倍率は小数点第二位以下を四捨五入しています。
| 入試年度 | 応募人員 | 募集人員 | 最終応募倍率 |
|---|---|---|---|
| 2025年度 | 590 | 160 | 約3.7倍 |
| 2024年度 | 667 | 160 | 約4.2倍 |
東京都立大泉高等学校附属中学校における適性検査の出題傾向

東京都立大泉高等学校附属中学校の適性検査における出題傾向は以下のとおりです。
適性検査Ⅰは国語型の試験
適性検査Ⅰの大問はひとつで試験時間は45分です。国語型の試験で2025年度は読解文二種類とそれらを読んだ感想(会話形式)の計三種類が出題されています。大問一には問題一から問題三までがあり、問題一、二は穴埋めです。問題三は作文で400字以上440字以内の字数指定となっています。
条件およびきまりが提示されるため、それに従って答えなければなりません。文章を踏まえて自分の考えについて書くという内容なので、思考力、表現力、記述力が求められます。
適性検査Ⅱは科目を横断する内容
適性検査Ⅱの大問は三つで試験時間は45分です。2025年度は、算数・社会・理科が混在するような内容でした。大問一は図形やブロックの問題、大問二はゴミの収集と処理についての会話文を踏まえ、資料を見て解答する問題。大問三はシャボン玉の実験の問題です。
グラフや図表をはじめ、資料が多いのが特徴で、必要な情報を読み取り、処理する力を求められます。記述問題が多いので記述力・表現力も欠かせません。事象の説明だけではなく、自分の意見を問われる問題もあります。記述のスペースが大きくとられているため、2025年度は解答用紙が三ページにもわたりました。
適性検査Ⅲはデータから考える問題
適性検査Ⅲの大問は二つで、制限時間は45分です。2025年度は、砂時計を導入として展開する実験の問題、インターネットについての問題などが出題されました。実験結果や資料が数多く提示されるので、必要なデータを拾い上げながら解くタイプの問題です。
計算問題も出題されます。適性検査Ⅱと同様、科目を横断しての出題です。さまざまな分野を融合した問題が多く見られます。
- 適性検査Ⅰは国語型で、思考力、表現力、記述力が求められる
- 適性検査Ⅱ、Ⅲは科目を横断した問題が出題され、資料から答えを導き出す力が求められる
東京都立大泉高等学校附属中学校に合格したい。どんな勉強が効果的?

東京都立大泉高等学校附属中学校に合格するためには、どういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
分野を問わず文章を読めるように
説明文や物語文、随筆文などさまざまなジャンルから出題されるので読み慣れておきましょう。感想の会話文もあり、時間内に三種類読まなければなりません。問題数自体は少ないですが、最後の作文に時間をとられることを考えると、スピーディーに読み終える必要があります。
しかし、説明文が出題されると、身構えてしまう子供は多いです。基本的に難解な文体ではなく、比較的読みやすい文体の問題が出題されます。そのため、難しい文章を読みこなせる必要はありません。それよりも平易な文章を素早く的確に読み込めるようにしましょう。
抜き出しや説明記述も
作文以外では、穴埋め問題が出題されています。抜き出しの場合もあれば、説明記述の場合もあります。さまざまなタイプの記述問題に対応できるようにしておきましょう。
読む量が多いので、問題を先にチェックする方法も
複数の文章を踏まえて問題に至る構成なので、設問に辿り着く前に内容が抜けていってしまう子供もいます。その場合は、問題を先に読んでおくとよいでしょう。もう一度頭から読み直すようなことがないよう、工夫して取り組む姿勢が必要です。
400字以上の文章を書ける表現力・記述力を
解答欄の大きさからわかるように、大問一の配点はほとんどを作文が占めているといっても過言ではありません。提示された条件やきまりを守って作文を仕上げる力を身につけなければなりません。問題を読み終えると同時に解き始められるぐらいの実力を目指しましょう。
自己分析をしておこう
作文問題を解くためには自分の考えや想い、経験をあらかじめ整理しておくとよいです。自分はどういう人間なのか、どういう経験を経て成長してきたのかを知ることで、作文に対応しやすくなります。提示されたテーマと自分を結び付けられるよう、あらかじめ準備しておきましょう。
- 様々なジャンルの文章を素早く的確に読めるようにする
- 問題文を先にチェックするなど、工夫して問題に取り組む力を養う
- 提示された条件やきまりを守って作文を仕上げる力を身につける
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
図形問題を解けるように
2025年度は立体図形や展開図といった図形問題が出題されました。立体図形は苦手意識の強い子供が多い単元です。特に立体の切断は解けない子供が多いので、なるべく早いうちから対策をしてください。
いろんなバリエーションの問題を解いているうちに、少しずつ出題パターンが頭に入ってきます。立体を想像するのが不得意でも、過去に解いた問題と類似していれば、思考する上で手がかりを得られます。
場合の数の対策をしよう
場合の数もまた頻出単元です。場合の数は多様なパターンの問題があり、とりあえず手を動かすもの、計算から始めるものなど、アプローチもさまざまです。適性検査における場合の数は提示される条件が多く、煩雑な問題が多いため、そのボリュームにあらかじめ慣れておかないと解けません。問題文だけで数ページにわたるようなケースも珍しくないので、落ち着いて条件を整理する力を身につけましょう。
線を引きながら読む、重要なところは囲む、といったように、問題文を読み進めやすくする工夫をしてみるとよいでしょう。
条件を整理し、最短のアプローチを考えよう
提示された複数の条件を整理して、結論を導き出す問題がよく出ます。遠回りの解法を選ぶとタイムロスなので、最短のアプローチを見つけたいところです。そのためには問題をこなしてどうアプローチするかの引き出しを増やしておく必要があります。
算数と理科が合わさった問題も
基本的に適性検査は科目を横断する出題なので、算数の要素と理科の要素が融合したような問題もよく出題されます。「理科の問題を解いている」という思い込みにとらわれていると、「理科の公式ではなく、算数で学んできた解法を切り口にしよう」という発想が出てきません。実際の適性検査はひとつの科目に分類できる問題は少ないので、その認識をもって問題と向き合うようにしましょう。
- いろんなバリエーションの図形問題に取り組み、出題傾向をつかんでおく
- 場合の数は提示される条件が多く、煩雑な問題が多いため、条件を整理する力を身につける
- 算数と理科の要素が融合したような問題も出題されるため、科目を横断した問題に対応できる力を養う
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
段階的な実験の問題が解けるように
理科では、実験問題が定番として出ています。たとえば、2025年度は適性検査Ⅱでシャボン玉を作るという実験の問題が出ました。2024年度には摩擦に関する問題が出題されています。
シャボン玉の実験のほうを例に挙げると、最初に実験1を行い、それに続いて実験2、実験3とさまざまな実験を行いました。展開していく実験をそれぞれ理解する必要がありますし、実験1だけでも6つもの手順があります。
情報量が多いので、解くのは大変ですが、ひとつひとつ順を追って内容を理解しましょう。情報や条件の多い実験問題をたくさん解いておいてください。もちろん、理科の基本的な知識や考え方を身につけておくことも大切です。
実験結果を図表から読み取ろう
実験結果をまとめた図表から必要な情報を読み取り、計算をする問題が頻出です。類似する問題を解き、できるようにしておきましょう。また、どうしてその実験結果になったのかを数字だけではなく言葉で説明できるようにしましょう。理科は説明記述がよく出ます。
- 情報や条件の多い実験問題を、情報を整理し、順を追って解けるようにする
- 図表から必要な情報を読み取り、答えを導き出す力を身につける
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
社会はあるトピックについての思考力が問われる
社会関連のトピックだと、2025年度はゴミの問題、2024年度は交通手段についての問題を扱っています。社会問題について資料とともに会話文形式に展開していくため、扱っているトピックについての知識がなくても、解くことが可能です。文中にヒントが散りばめられています。よく読み込むことが必要です。
一般的に、私立中学の入試問題では地理・歴史・公民分野を細部まで覚え込む問題が多く出ます。対して都立の適性検査では、知識を問う問題よりも思考力を問う問題が大部分を占めています。
グラフや図表から情報を読み込む
グラフや図表から情報を読み込む作業が必要です。提示された資料から必要なデータを読み取れるようにしましょう。また、読み取った内容を用いて説明記述するような問題がよく出ます。データが示す内容を言葉に置き換える力を養いましょう。
- グラフや図表、文中からヒントを読み取り、答えにたどり着く思考力を養う
必要な情報を落ち着いて読み取ろう

東京都立大泉高等学校附属中学校では、長い文章と資料を踏まえた問題が数多く出題されます。ボリュームが多いので圧倒されますが、問題を解く上で必要な情報はなにかを見極めて、読み込む作業が必要です。
適性検査Ⅰでは、複数の文章を読み、記述問題と作文問題を解きます。作文は記述力・表現力が欠かせません。適性検査Ⅱ・Ⅲでは、科目を横断する内容が出題されます。適性検査Ⅰでは文章がメインでしたが、適性検査Ⅱ・Ⅲでは文章に加え、大量の資料が出題されます。ひとつの問題がページをまたいで出題されることも多く、目を通すだけでも大変ですが、必要な情報を読み取って問題を解くようにしましょう。
時間は45分しかないので、集中力を要します。また、できるだけ早く最適な解法を見つけないと、タイムロスで失点してしまうので、あらかじめ条件を整理して解くタイプの問題をたくさん経験しておきましょう。
記述問題が多いので、採点者に意図が伝わる文章を書く必要があります。主語や目的語を省いてしまったり、主語、述語がうまくかみ合っていなかったり、一文が長すぎてしまったりといった書き方をしているケースはよく見られるので、自身の問題点を把握し改善を図りましょう。
