さいたま市立浦和中学校は知的探究心の育成に重きを置く中高一貫校です。この記事では、さいたま市立浦和中学校を目指す家庭に向けて、適性検査の出題傾向と勉強法を紹介します。
そもそもさいたま市立浦和中学校ってどんな学校?

さいたま市立浦和中学校は、「高い知性と豊かな感性・表現力を備えた国際社会に貢献できる生徒の育成」を目指している中高一貫校です。平成19年4月1日に、さいたま市初の併設型中高一貫教育校として誕生し、部活動にも勉強にも力を入れる「文武両道」の教育を実現しています。
平日の授業のほかに、隔週土曜日を中心に、年12回の3時間(場合によっては4時間)の授業を実施しています。夏休みには夏期講習を開催。国語、社会、数学、理科、グローバルスタディ、保健体育、音楽など、多くの科目に対応しています。基礎の復習から発展問題まで幅広い内容です。
他にも、生徒の知的探究心に応え、豊かな学校生活を提供するためのさまざまなプログラムや行事があります。博物館実習や海外フィールドワーク、高校の教員による授業、年間12回の土曜授業、中高合同の文化祭や体育祭、大学や企業と連携したプログラムなどはその一例です。
2024年度の進学実績のいくつかを紹介すると、東京大学3名、東北大学2名、北海道大学1名、千葉大学2名、埼玉大学3名、金沢大学1名、早稲田大学12名、慶應義塾大学7名などが挙げられます。
さいたま市立浦和中学校の入試概要

さいたま市立浦和中学校の入試について見ていきましょう。
2026年度の入試
男子40名、女子40名の計80名の募集で、一次選抜は2026年1月10日、二次選抜は2026年1月17日に設定されています。一次選抜で適性検査Ⅰ・Ⅱを受け、二次選抜では適性検査Ⅲと個人・集団面接を受ける流れです。個人面接は10分程度ですが、冒頭の1分は英語を用いて自己紹介を行います。英語を重視しているのは面接だけではなく、適性検査の問題文の中にも一部、英語での会話文を用いている箇所があります。
集団面接は8、9名程度の人数で実施し、集団内でコミュニケーションをとりながら、課題解決に向けた姿勢を見せられるかどうかが試されます。2025年度を例に挙げると、9名程度の受検生を1グループとして、自己紹介の後、課題について話し合う場が設けられました。本と人が出会うための取り組みを考え、さいたま市に提案するというものです。
また、適性検査と面接のほかに、調査書の提出が求められます。調査書の対象となる学年は6年生です。
受検に向けての手続きとして、2025年12月3日から2025年12月26日までに志願者情報の登録をサイト上で行います。書類一式は、2025年12月25日および2025年12月26日に郵便局窓口で、2026年1月5日を配達日指定日として簡易書留で郵送する決まりです。
なお、さいたま市立大宮国際中等教育学校と併願できる仕組みですが、二次選抜は同日であるため、両方受かってもどちらかしか受けることができません。
2025年度の入試倍率
2025年度は募集人員80名、応募人員496名で、最終応募倍率は6.2倍でした。2024年度は80名の募集人員に、応募人員が659名であったため、最終応募倍率は約8.2倍でした。なお、最終応募倍率は小数点第二位以下を四捨五入しています。
| 入試年度 | 応募人員 | 募集人員 | 最終応募倍率 |
|---|---|---|---|
| 2025年度 | 496名 | 80名 | 6.2倍 |
| 2024年度 | 659名 | 80名 | 約8.2倍 |
さいたま市立浦和中学校における適性検査の出題傾向

さいたま市立浦和中学校の適性検査における出題傾向は以下のとおりです。
適性検査Ⅰは国語タイプの問題が多め
適性検査Ⅰは試験時間45分、大問は五つです。国語や社会といった分野の比率が高く、2025年度の適性検査では、大問一で物語文、大問二で説明文、大問三で説明文、大問四は資料やグラフ、図などからの読み取り、考察、大問五は統計資料や史料、図からの読み取り、考察する問題が出題されました。大問の構成はここ数年同じです。
物語文で求められているのは、登場人物の心情や行動への理解です。説明文は書かれている内容についての正確な理解と、他の具体例に置き換えたときの発想力などが求められます。
適性検査Ⅱは資料の読み取りと論理的思考が中心
適性検査Ⅱは試験時間45分、大問は五つです。算数や理科に関連する分野が多めで、2025年度の適性検査では、大問一が数値計算の正確性や、会話・資料などの読み取りをする力を見る問題、大問二が資料やデータの情報から論理的に思考できるかを問う問題、大問三・四が身近な数学的課題・科学的課題の解決を目指す問題、大問五が科学的事象や自然現象の問題でした。
過去問を見ると、適性検査Ⅰのように大問ごとの出題傾向が固定されているわけではありませんが、おおむね傾向は同じです。資料から必要な情報を読み取る問題が多く、数学的思考や科学的思考、身近な課題への論理的思考が求められます。
適性検査Ⅲは複数の資料の関連性を読み解く
適性検査Ⅲは試験時間45分、大問は三つです。2025年度の適性検査では、大問一は複数の資料の関係性を読み解く問題、大問二は会話文や資料から必要な情報を読み解き、数学的処理を行ったり、考え方を説明したりする問題、大問三は資料を的確に読み取り、課題を考察し、解決策を考えたり、自分の意見を的確にまとめたりする問題が出題されました。
適性検査Ⅲは大問一から三まで、例年類似する出題意図に基づいて構成されています。
- 適正検査Ⅰでは国語と社会を中心に、正確な理解力と柔軟な発想力が求められる
- 適正検査Ⅱは算数や理科に関連する分野が多く、数学的思考や科学的思考、身近な課題への論理的思考などの力が求められる
- 適正検査Ⅲでは、複数の資料の関連性から答えを導き出す力が求められる
さいたま市立浦和中学校に合格したい。どんな勉強が効果的?

さいたま市立浦和中学校に合格するためには、どういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
物語文も説明文も出題
適性検査Ⅰでは物語文と説明文の両方が出題されます。語注がついているので、意味のわからない言葉があれば確認するようにしてください。物語文は心情変化に気をつけながら読む習慣をつけましょう。説明文は何を主張する内容なのかに注意しましょう。
意味段落ごとに分けて読む習慣をつけるとよいです。
読み直さないで済むように工夫を
文章を読み込む作業が苦手な子供には、傍線を引きながら読むことをおすすめします。流し読みしないよう、重要な言葉だけ選んで強調していくとよいです。本文はもちろんですが、選択問題でも同様です。複数の選択肢の中から、適切な選択肢をひとつ選ぶ記号問題が出題されます。選択肢ひとつにつき三行ぐらいの文章の問題もあるので、注意して読み込みましょう。
読み直す時間のタイムロスを防ぐため、各選択肢の重要な言葉には線を引くとよいです。
平易で読みやすい文章が多い
難解な文章よりは平易で読みやすい文章のほうが多く出題されています。一般的に、物語文よりも説明文に苦手意識を持つ子供が多いですが、読書を通しての対策を考えているのであれば、岩波ジュニア新書の興味の持てそうな本から読んでみるのをおすすめします。さまざまなテーマを扱っているレーベルであるため、読んでみたいと思える本を探しやすいですし、難易度としてもちょうどよいです。
実際に、2022年度の適性検査では、岩波ジュニア新書から元村有希子著「カガク力を強くする!」が出題されています。
- 物語文を読む時は心情変化に気をつけながら読む
- 文章を読み直さないで済むように、重要な言葉には線を引くなどの工夫をする
- 興味が持てそうな本を普段から読むようにする
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
場合の数や規則性が頻出
場合の数や規則性はよく出題される単元なので、集中的に対策が必要です。過去問や対策問題集で、多くの問題を解いておくことをおすすめします。場合の数や規則性と図形を絡めた問題も頻出で、たとえば2024年度には正方形や正三角形を使った規則性の問題が出題されました。
図形を想像する力が必要
立体図形を切ったり、平面図形を折ったり切ったりする問題も出題されています。図形を想像する力を問う問題です。たとえば、2025年度には切り紙の問題、2022年度には豆腐をカットする問題、2020年度には古墳を模型で作る問題が出題されています。
過去問をさかのぼり、どんな問題が出題されてきたのかを把握しておきましょう。図形は苦手な子供が多い単元なので、早いうちから取り組んでおくことをおすすめします。
グラフや図表を使った問題が多い
適性検査は資料やグラフ、図表を複数提示する問題が頻出です。情報をひとつひとつ読み解いていくもの、あるいは相互の関連性を読み解き解いていくものなどさまざまな問題が出題されています。提示される情報が多いと、それだけで混乱してしまう子供も一定数いますが、だからこそ落ち着いて読み解く力が求められています。
条件整理の問題を解けるようにしよう
条件整理の問題も適性検査の定番です。たとえば、2024年度には映画館の座席について、家族が提示する複数の条件を踏まえて考える問題が出題されています。7つの条件の中にヒントが隠れているので、ひとつずつ整理していく問題です。
条件整理の問題は、類題を解いていけば、ある程度パターンを押さえることができます。スムーズに解けるよう数多くの問題に挑戦するのがよいでしょう。
- 過去問をさかのぼってどんな問題が出題されてきたのかを把握、対策する
- グラフや図表を使った問題は、落ち着いて、ひとつひとつの情報を読み取れるようにする
- 条件整理の問題を多くこなして色々なパターンに慣れておく
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
実験の問題がメイン
理科でよく出るのは実験の問題です。実験の問題では、物理分野が頻出でここ三年間を振り返ると、2025年度は物体の落下、2024年度は電気のはたらき、2023年度は振り子でした。2022年度まで遡ると、生物分野であるあさがおの実験や化学分野である集気びんを使った実験などが出題されています。
そのため、必ず物理から出るわけではないですが、ここ数年物理分野からの出題が続いているのは事実です。苦手な単元を中心に、対策することをおすすめします。
見慣れない実験でも基礎が大切
見慣れない実験であっても、問われている内容は小学校で学ぶ基礎知識に基づいたものばかりです。そのため、教科書で学んだ理科の内容を復習しておきましょう。計算が必要な単元に苦手意識を持つ子供も多いですが、スムーズに解けるよう繰り返しやり込んでおきたいものです。
- 過去問をよく振り返り、近年の傾向を把握、慣れておく
- 教科書で学んだ理科の内容をよく復習する
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
資料を見て発表原稿をまとめる問題
適性検査Ⅲでは複数の資料を見て、発表原稿をまとめる問題が出題されています。大問一から大問三まですべて発表原稿をまとめる問題で、2025年度は大問一が300字以内、大問二が250字以内、大問三が300字以内でした。過去問を解いて同様の出題形式にも対応できるようにしておくことをおすすめします。
社会問題に目を向けよう
今現在、問題視されている問題を扱っているので、社会問題には常に関心を向けておきたいところです。2025年度であれば、大問一で環境保護活動、大問三で地域の活性化について扱っています。問題文の中にヒントが散りばめられているので、注意深く読めば解けるようになってはいます。しかし、あらかじめ知っていれば、よりスムーズに情報を理解できます。
- 限られた文字数と与えられた条件の中で文章を書けるようにする
- 身近な社会問題に日頃から関心を向けておく
過去問から傾向が読み取りやすいので対策を

さいたま市立浦和中学校の受検問題は比較的、過去問から出題傾向が読み取りやすい問題であるといえます。前年の出題形式を踏まえた問題が多いので、過去問を中心に取り組んでおくとよいでしょう。
国語は物語文も説明文も出題されるので、どちらも読みこなせるようにしておいてください。平易で読みやすい文章が多いことを考えると、問題集のほかには岩波ジュニア新書あたりの子供でも読める新書をおすすめします。子供が関心を示したタイトルがあれば、ぜひ読む機会を作ってあげてみてください。
算数は、場合の数や規則性、条件整理、図形などがよく出題されます。問題文が長く展開する内容が多く、集中力が必須です。まずはこれらの分野の問題に慣れておくことをおすすめします。過去問でボリュームを把握したら、類題を探してください。
理科は実験の問題が頻出です。中には見慣れない複雑な実験を行う問題もあります。しかし、どれも奇をてらうような問題ではありません。改めて学校の教科書を復習しておくことをおすすめします。
社会は資料が多いので、解くためのヒントを見つけるのにかえって苦労するかもしれません。また、問題文の一部が英語での会話になっている箇所もあります。英語もある程度読めるようにしておきましょう。
