実践女子学園中学校は、渋谷区にある女子中高一貫校で、校名にあるように「実践」の理念を教えています。この記事では実践女子学園中学校について紹介します。
そもそも実践女子学園中学校ってどんな学校?
実践女子学園中学校は、女子教育の先覚者下田歌子によって明治32年に創設されました。校名の「実践」は、学問を実際に役立てて実行するという意味を持ち、実生活における知恵として生活に役立て社会に還元することを目指そうとするものです。「常に変化し続けること」こそ「伝統」であるとし、実践力、行動力ある女性を育んでいる学校です。
グローバル教育に注力していて、さまざまな実習や研修やキャンプ、交換留学などが実施されています。一例として、日本文化実習、ブリティッシュヒルズクリスマス研修、イングリッシュサイエンスキャンプなどが挙げられます。ネイティブによる英語力講座があったり、英語指導が三つのレベルに分けて行われていたりと取り組みはさまざまです。グローバル教育以外では、探究教育や感性表現教育にも力を入れています。
実践女子学園中学校の進学先はさまざまで、海外の大学を選ぶケースも珍しくありません。2024年度卒業生のデータによれば、割合の大きい順に、私大の外部受験が42.1%、実践女子大学への進学が24.6%、海外大学受験が3.1%となっています。2025年度入試のデータから、私立大学への進路先を見ると、早稲田大学一名(既卒)、慶應大学・上智大学・明治大学が各三名です。
なお、実践女子大学および実践女子短期大学部への推薦制度も整っていて、「専願」と「併願」の二種類があります。専願は、内部推薦に絞った制度で、すべての学部・学科が対象です。併願は、実践女子大学の文学部、人間社会学部、国際学部、生活科学部食生活科学科食物科学専攻、健康栄養専攻、生活文化学科生活心理専攻、生活科学部現代生活学科、環境デザイン学部への推薦を得た状態で、他大学を受験することができます。
実践女子学園中学校の入試概要
実践女子学園中学校の入試概要を見ていきましょう。
2026年度入試
2026年度の一般入試では二点の変更点があると予告されています。ひとつめは、「複数回優遇入試(第五・六回)において、第一・三回および思考表現入試の加点を増やす」ということ。ふたつめは、「英語資格入試において準2級プラスの新設に伴い、80点、90点の基準の変更」です。
一般入試は2科(国・算)・4科(国・算・理・社)試験があり、第一回(2月1日午前45名募集)・第三回(2月2日午前40名募集)は国語100点(45分)、算数100点(45分)、社会・理科各50点(2科目で50分)です。第一回と第三回4科だけではなく、2科でも受けることができます。
一方、第二回(2月1日午後40名募集)・第四回(2月2日午後30名募集)・第五回(2月3日午後20名募集)・第六回(2月4日午後20名募集)は2科のみで、国語・算数はそれぞれ100点(45分)です。
一般入試 | 受験科目 | 募集人数 |
---|---|---|
第一回 | 2科・4科 | 45名 |
第二回 | 2科 | 40名 |
第三回 | 2科・4科 | 40名 |
第四回 | 2科 | 30名 |
第五回 | 2科 | 20名 |
第六回 | 2科 | 20名 |
出願期間は1月10日(土)0:00から試験当日6:00までで、Web出願のみ。検定料は22,000円ですが、複数回受けると割安になり、2回で32,000円、3回で42,000円といった具合に回数が増えるごとにプラス一万円で済みます。そのため、6回すべて受けても72,000円です。
一般入試には思考表現入試と英語資格入試も含まれます。思考表現入試は2月1日午前で10名募集、英語資格入試は2月1日午後の15名募集と2月2日午後の10名募集です。思考表現入試は「身近なものごとをテーマに出題 自分の考えを記述する筆記試験(45分)・記述内容について説明する質疑応答(5~10分)」です。英語資格入試は「1科(国または算)の場合、1科+英語資格。2科(国・算)の場合、2科+英語資格となっています。なお試験は、国語100点(45分)。算数100点(45分)です。
一般入試以外には帰国生入試があります。帰国生入試は第一回が11月20日、第二回が12月17日で計10名の募集です。検定料は一般入試と同じく22,000円に設定されています。
2025年度入試倍率
一般入試は第一回の受験者数が2科54名、4科184名で計238名、合格者数73名で実質倍率約3.3倍でした。第二回は受験者数280名、合格者数80名、実質倍率3.5倍。第三回は2科の受験者数72名、4科の受験者数279名で計351名、合格者数105名、実質倍率は約3.3倍でした。第四回は受験者数279名、合格者数78名で実質倍率は約3.6倍。第五回は受験者数320名、合格者数60名で実質倍率約5.3倍、第六回は受験者数293名、合格者数67名で実質倍率約4.4倍でした。
第一回の英語資格入試の受験者数は1科目31名、2科目54名の計85名で合格者数46名、実質倍率約1.8倍。第二回の英語資格は1科目の受験者数が23名、2科目の受験者数が13名の計36名で、合格者数が19名で実質倍率は約1.9倍でした。
第一回の思考表現の受験者数は24名で、合格者数16名。実質倍率は1.5倍でした。帰国生入試は第一回の受験者数が50名で合格者数が47名、実質倍率は約1.1倍、第二回の受験者数が8名で合格者数が5名、実質倍率は1.6倍でした。
入試区分 | 受験者数 | 合格者数 | 実質倍率 |
---|---|---|---|
一般入試 第一回 | (2科)54名 (4科)184名 | 73名 | 3.3倍 |
一般入試 第二回 | (2科)280名 | 80名 | 3.5倍 |
一般入試 第三回 | (2科)72名 (4科)279名 | 105名 | 3.3倍 |
一般入試 第四回 | (2科)279名 | 78名 | 3.6倍 |
一般入試 第五回 | (2科)320名 | 60名 | 5.3倍 |
一般入試 第六回 | (2科)293名 | 67名 | 4.4倍 |
英語資格入試 第一回 | (1科)31名 (2科)54名 | 46名 | 1.8倍 |
英語資格入試 第二回 | (1科)23名 (2科)13名 | 19名 | 1.9倍 |
思考表現 第一回 | 24名 | 16名 | 1.5倍 | 帰国生入試 第一回 | 50名 | 47名 | 1.1倍 |
帰国生入試 第二回 | 8名 | 5名 | 1.6倍 |
実践女子学園中学校における国語・算数・理科・社会の出題傾向
実践女子学園中学校の一般入試における国語・算数・理科・社会の出題傾向を紹介します。
国語は知識問題も押さえよう
国語は試験時間45分配点100点で大問は二つです。大問一が読解文、大問二が漢字の読み書きを含めた知識問題で構成されています。読解文は物語文の回もあれば、論説文の回もあります。出題形式は選択問題、抜き出し、字数指定の説明記述などです。大問二は漢字の読み書きや語彙力を問う問題が出題されます。語彙力の問題は基本レベルの慣用句などであり、難しくはありません。
算数は計算と小問集合の占める割合が大きい
算数は試験時間45分配点100点で大問は四つ程度です。大問一が計算、大問二が小問集合、大問三以下が単元別の出題という構成になっています。計算は括弧や小数、分数を使った四則計算、小問集合は基本レベルの問題ばかりです。あとは単元別の出題ですが、難問が出るわけではありません。一、二よりは難しい内容となっていますが、基本的には単元を理解できているかを問う問題や、よく読めば解けるタイプの問題などが出題されます。
理科は出ない分野があることも
理科は社会と合わせて試験時間50分で、各50点です。大問は三つほどで、物理・化学・生物・地学のいずれかの分野からそれぞれ三つ出ます。どの分野が出るかは回によって異なるため、満遍なく勉強する必要がある試験です。選択問題が多いですが、語句を答えさせる問題や説明記述、計算も出題されています。
社会は大問三つから
社会は理科と合わせて試験時間50分で、各50点です。大問は二つですが、歴史・地理・公民の三つの分野の内容が落とし込まれています。歴史と公民がセットになっていることが多いです。選択問題が多いですが、語句を記入する問題や説明記述の問題も出題されます。難問は出ず、基本的な知識を問う問題が中心です。
- 基本的に難しい問題は少なく、知識が定着しているかを問う問題が多い
- 難易度が高くない分、ケアレスミスと時間配分がカギになる
実践女子学園中学校に合格したい。どんな勉強が効果的?
実践女子学園中学校に合格するためには、どういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
説明文にも物語文にも対応できるように
読解文は説明文も物語文も出題されているので、どちらも解けるようにしておきましょう。説明文はとりわけ苦手な子供が多いジャンルです。実践女子学園中学校の説明文は比較的平易で読みやすいですが、数をこなして慣れておくとよいでしょう。読解文は言葉の解説を最後に載せているので、わからない言葉があったからといって身構える必要はありません。もし注を見ても載っていない言葉があれば、前後の文脈で意味をとるようにしましょう。
語彙力をつけておこう
国語の知識問題では言葉の意味がよく問われます。答えられるようにしておきたいところです。本番に向けて語彙力をつけておきましょう。国語の問題集を解く際にもわからない言葉の意味をできるだけ頭に入れるようにしてください。問題を解き終えてすぐ忘れてしまうケースも多いですが、受験前に慌てて言葉を覚え直すのは大変です。コツコツと積み重ねていきましょう。
漢字の読み書きでも語彙力は必須
漢字の読み書きが出題されているので、どちらも解けるようにしておきましょう。漢字の書き取りは難しいわけではありませんが、語彙力に乏しいとピンとこないタイプの問題が出ます。たとえば「エイダン」は「英断」、「ショウミする」は「賞味する」です。文章を読みなれていない人は、日常であまり使わない言葉であるため、戸惑う傾向があります。意味を理解し、書けるようにしておきましょう。
- 読解分は数をこなして慣れておく
- 知識問題でも漢字の読み書きでも語彙力は必須になる
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
算数はケアレスミス削減がカギ
算数の問題はほとんどが計算と小問集合なので、いかにケアレスミスをしないで簡単な問題を解けるかが問われます。限られた時間でも焦らずに見直せる力を身につけましょう。
単元別の問題は焦らない
単元別の問題でも難問は出題されません。単元別の問題は大問二つ分と少なく、出題単元も変わります。だからこそ、日頃から算数の各単元への理解を深めておく姿勢が大切です。標準レベルの問題が確実に解けるようにしておきましょう。中には問題をよく読めば基礎的な知識のみで解ける問題もあります。時間配分を適切に行えるようにし、焦らず臨めるだけの余裕が持てるようにしましょう。
- ケアレスミスの削減と時間配分を気にするように心がける
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
合わせて50分。時間配分に注意
理科は社会と合わせて50分という時間配分なので、片方の科目にしわ寄せが来ないよう、気をつけるようにしましょう。選択問題がメインなので、そんなに時間はかかりませんが、計算を要する問題や説明記述も混在しているので、手こずりそうと思ったらひとまず飛ばしてしまうのがよいでしょう。
計算問題はスピーディーに解けるように
出題される計算問題は基本的なものばかりなので、解き慣れているかどうかがカギとなります。計算が出題される単元で苦手なところがあれば、問題を読み終えるのと同時に手が動くぐらいの理解度まで仕上げておきたいところです。
- 計算問題をスピーディーに解けるように基本的な問題を解きなれておく
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
地図や雨温図、各地のデータを頭に入れよう
地図や雨温図、各地のデータを頭に入れておくことが必要です。地理の問題では、各地の位置関係や特徴が頭に入っていないと解けないので、テキストのグラフや図表をチェックしておいてください。地理は早めに学ぶ分、抜け落ちるのも早いので復習で入れ直す作業が欠かせません。
時事問題に関心を
時事問題と絡めた出題がよく出るので、社会にも日頃から目を向けておくことをおすすめします。どうしてそうなったのか、事象の背景を説明できるようにしておくとよいでしょう。ただし、時事問題に対する見方はネットの個人発信ではなく、専門性の高いメディアから仕入れるようにしましょう。
- 各地のデータをおかないと解けない問題が多いので必ず頭に入れておく
- 専門性の高いメディアから時事問題を日頃から取り入れておく
出題傾向を押さえた上で標準レベルまでを固めて
過去問をやり込んで出題傾向を押さえた上で、受験テキストの標準レベルまでを固めておくとよいです。学校のホームページにも過去問の掲載や、出題傾向のねらいや傾向の記載があるので、チェックしておくことをおすすめします。
難しい問題が出るわけではなく、知識が定着化しているかを問われる問題が多いです。国語では読解力や語彙力、漢字の知識。算数では計算力や基本の理解、ケアレスミスを予防する力が問われます。理科と社会は時間配分や基礎知識の定着化、社会問題への関心が欠かせません。
基本レベル・標準レベルの問題中心の出題なので、苦手単元を克服し、受験テキストが安定して解けるレベルであれば得点できる問題だといえます。ケアレスミスに気をつけて、時間配分を間違えず、合格ラインを目指しましょう。複数回受験できる学校なので、志望度が高い場合は複数回申し込み、予行練習も兼ねて受けたいところです。