東邦大学付属東邦中学校は学校法人東邦大学によって1961年に開校した学校です。建学理念として「自然・生命・人間」の尊重を掲げています。この記事では東邦大学付属東邦中学校を目指す家庭に向けて、各科目の出題傾向と勉強法を紹介します。
そもそも東邦大学付属東邦中学校ってどんな学校?
東邦大学付属東邦中学校では、自分探し学習(EXPLORING STUDY)に重きを置いています。生徒一人ひとりが自身の可能性を切り拓いていくためのプログラムです。加えて、多様な進路選択に応えるリベラルアーツ型教育課程を採用しています。また、校外学習や修学旅行、Speech Contest、百人一首大会、音楽祭などをはじめとする各種行事などにも力を入れています。
授業は、六日制、週34単位時間、50分授業、3時間制です。国語の授業では、「読書マラソン」を導入していて、中学一年から高校二年まで取り組んでいます。生徒それぞれのペースで、専用の「読書マラソンノート」にあらすじや感想を記入する取り組みです。
社会では鎌倉散策を実施しています。中学一年生の中から希望者を募り、授業で扱った内容を現地で学習する企画です。
数学では、「数学トレーニングマラソン」を行っています。毎日一枚ずつ自分のペースでプリントを進める取り組みです。理科は実験に重きを置き、実験室を数多く用意しています。中高合わせると九つもの実験室があり、「理系に強い東邦」と呼ばれるのは、こうした環境によるところも大きいといえます。
英語は、進路目標を達成するために、バランスのとれた英語力を育成します。身につけた英語力を活用して社会貢献ができる生徒の育成も目指すところです。
どの科目も主体的な学びを促すカリキュラムで、子供を成長させていく内容となっています。
東邦大学付属東邦中学校の入試概要
東邦大学付属東邦中学校の入試について見ていきましょう。
2025年度の入試
2025年度の入試は推薦入学試験の募集が40名、前期入学試験の募集が240名、後期入学試験の募集が20名です。推薦入学試験の出願期間は2024年11月1日から2024年度11月15日、前期入学試験の出願期間は2024年12月3日~2025年1月8日、後期入学試験の出願期間は2025年1月23日~2025年2月2日となっています。受験料はそれぞれ26,000円です。
2024年度の入試倍率
2024年度は、推薦は598名受験40名合格で実質倍率は約15.0倍、帰国生は80名受験40名合格で、実質倍率は2.0倍、前期は2143名受験で合格者数972名、実質倍率約約2.2倍でした。後期は345名受験で合格者数20名、実質倍率約17.3倍となりました。なお、小数点第二位以下を四捨五入しています。
入試区分 | 受験者数 | 合格者数 | 実質倍率 |
---|---|---|---|
推薦入試 | 598名 | 40名 | 約15.0倍 |
帰国生入試 | 80名 | 40名 | 2.0倍 |
前期入試 | 2,143名 | 972名 | 約2.2倍 |
後期入試 | 345名 | 20名 | 約17.3倍 |
東邦大学付属東邦中学校における国語・算数・理科・社会の出題傾向
東邦大学付属東邦中学校の前期試験における国語・算数・理科・社会の出題傾向を紹介します。
国語は論説文と物語文の大問二つ
国語の制限時間は45分で配点は100点です。大問は二つで、論説文と物語文がそれぞれ出題されます。
漢字や総合知識問題は大問の中に小問として組み込まれる形式です。解答用紙を見るとわかりますが、記述問題らしい記述問題は出題されません。数文字抜き出しをする問題はありますが、その程度です。出題形式は、選択問題がメインとなっています。文章量は五千字から七千字程度なので、難関校の中では多くありません。
算数は標準問題とやや難しい問題が出題
算数の制限時間は45分で配点は100点です。大問は六つで、大問一は計算、大問二は小問集合、大問三以降は単元別の出題となっています。
難易度は標準的なものからやや難しい問題までが出ます。頻出単元として挙げられるのは平面図形です。七割解けるレベルを目指したいところですが、2023年度のように難易度が易しいと受験者平均点で7割を上回ってしまうケースもあります。なお、解答用紙に記入するのは答えのみです。
理科は前半が易しく後半は難しい
理科の制限時間は45分で配点は100点です。大問は六つ前後で、時事を絡めた問題が多く出題される傾向にあります。
たとえば、問一では集中豪雨の問題に触れ、問三では連続テレビ小説、問五では条件付特定外来生物、と大問六つのうちの半分が時事と絡めた内容になっていました。問題の中でヒントを提示しているタイプも少なくないので、よく読んで解くようにしてください。各単元から計算問題が出るため、解けるように仕上げておきましょう。
社会は地理の難易度がやや高め
社会の制限時間は45分で配点は100点です。大問は三つで各分野からの出題となります。
地理の問題の切り口は変わったものが多いです。見慣れない図表や写真などを使った問題も少なくありません。歴史は出来事の順序を問う整序の問題や、出来事の内容を問う問題が出題されます。公民は現代へ問題提起するような内容が多いです。歴史上の出来事をよく知り反省すべき過去を反省することで学び、現代にどう生かしていくかを問う内容が出題されています。
- 国語は選択問題がメインで文章量は多くない
- 算数は平面図形が頻出単元で、やや難しい問題も出る
- 理科は時事を絡めた問題が多く、社会は変わった切り口から入る問題が多い
東邦大学付属東邦中学校に合格したい。どんな勉強が効果的?
東邦大学付属東邦中学校に合格するためには、どういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
選択問題で確実に正解を出せるように
国語では記述らしい記述はほとんど出ないので、選択問題で確実に正解を出せるようにしてください。物語文では登場人物の心情を、論説文では意味段落を追えるようにしておきます。正解を選ぶ問題では、選択肢として長めの文章が提示されるケースもあるので、きちんと読み込んで間違えないようにしましょう。
読解文の字数はけっして多くない
読解文の字数はけっして多くありません。五千字から七千字程度なので、中学受験問題に慣れている子供であれば、そこまで焦らなくても解けるはずです。記述問題が出ない分、読む時間を多めにとることは可能でしょう。しかし、そうはいっても、じっくり読んでいられるほどの時間はないですから、過去問を通して時間配分の感覚を身につけましょう。
漢字や文法の知識を固めよう
同じ漢字を使う熟語の問題であったり、語彙を問う問題であったりが大問の中に含まれています。漢字や語彙をまとめ教材で復習しておきましょう。
選択問題はひとつとは限らない
該当するものをひとつ選べというパターンもありますが、該当するものをすべて選べというパターンもあります。設問をよく読んで、間違えないようにしましょう。
- 過去問をやり込んで時間配分を身に付ける
- 漢字や文法、語彙はまとめ教材を活用する
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
計算問題でミスをしない
算数では計算問題が出題されます。分数、小数、括弧の混ざった問題であったり、解く順番に工夫がいる問題だったりが出るため、ミスをしないよう解き慣れておきましょう。できると思っていても、実際に解くと計算ミスをしてしまう子供は少なくありません。多くの場合は、問題数が足りないことによる理解不足です。計算が苦手な子供は毎日、コツコツと問題をやり込んでいくとよいでしょう。
小問集合で点数を落とさないよう
小問集合では点数を落とさないようにしなければなりません。五問程度出題されますが、どれも基本や標準レベルを理解していれば解ける問題になっています。基本レベルはついわかった気になって復習を疎かにしてしまいがちなので、注意が必要です。
算数の試験時間はややタイト
標準問題からやや難しい問題までが出題されます。やや難しい問題ではできるだけ効率的に解法へとたどり着きたいものです。問題を解く順番や取捨選択も重要だといえます。
頻出単元の平面図形を理解しよう
頻出単元として挙げられるのが平面図形です。平面図形は辺の長さや面積を求める問題がよく出ます。補助線を引いたり、相似や比を使ったりできるよう練習しておきましょう。
- 計算問題と小問集合で失点しない為に復習を疎かにしない
- 頻出単元である平面図形を集中的に対策する
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
時事問題を日頃からチェックしておこう
理科で得点するためには時事問題を日頃からチェックしておく必要があります。なぜなら大問の半分ぐらいは、時事問題に絡めた出題となっているためです。理科に関連する話題のニュースはチェックしておいてください。
図表が多いので必要な情報を読み取れるように
理科の問題では図表が多く出てきます。問題を解く上で必要な情報を読み取れるようにしておきましょう。極端に問題文が長い問題は出ませんが、文章と図表の両方を使う問題が多いです。そのため、一見してボリュームが多く感じられるかもしれませんが、実際に解いてみるとそんなことはありません。焦らず確実に解いてください。
記述問題は基本的に出ない
記述問題は基本的に出ないため、選択問題や記号問題、計算問題がメインです。問題文にヒントが散りばめてあり、よく読めば解ける思考型の問題も多いので、見たことのない内容が出題されたからといって諦めないようにしましょう。まずは、問題をよく読むところから始めてください。
- 時事問題を日頃からチェックする習慣を付ける
- 見慣れない思考型の問題でも問題文をよく読む習慣を付ける
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
地理の難しさにどう対応するか
地理はテーマを絞って出題されます。たとえば、2024年度は路面電車の走る都市についての問題が出題されました。路面電車の走る都市について詳しく知っている受験生はごく一握りでしょう。そのため、問題を見て「これは解けない」と身構えてしまう子供もいるはずです。しかし、よくよく設問を読み進めていくと、地理に関するあらゆる知識を駆使すれば解けるようになっています。
日の出日の入りの時間であったり湿度のグラフであったりといった手がかりが散りばめられているのです。そのため、解けるかどうかは、大問のテーマ自体というより個々のヒントを活かして解けるだけの知識があるかどうかが決め手になります。
歴史は知識と時系列をよく理解して
歴史は出来事に関する知識を身につけると同時に、時系列をよく理解する必要があります。また、国内の歴史だけを覚えるのではなく、海外の歴史の同時期の動きや関連性も合わせて覚えておいてください。
文章が長くても苦手意識を持つ必要はない
問題文が長く、読み物のようになっている問題もあります。たとえば、2024年度の大問二では東邦大学付属東邦中学校の学校新聞の名前に関連づけて、「たちばな」という植物に関する問題が出ています。遡って歴史との関わりが語られるという流れです。こうした文章が苦手な人にとっては解きづらく感じるかもしれません。しかし、問題で問われる内容の多くは、問題文それ自体ではなく、問題文に出てくる用語についてなので、苦手意識を持つ必要はありません。
公民は現代への問題提起
2024年度の大問三では、『はだしのゲン』の漫画から出題されています。東邦大学付属東邦中学校では、過去の日本のあり方、ひいては今の日本のあり方を改めて問い直すような問題が出題される傾向にあります。解く側に常日頃から問題意識があることが望ましいです。
- 過去問を通して問題からヒントを見つける練習をする
- 海外の歴史は日本の歴史との関連性で覚える
標準的な問題からやや難しい問題まで
東邦大学付属東邦中学校の問題は標準レベルおよびやや難しいレベルの問題が出題されます。難易度順に出題されるかどうかは科目によって違うので、過去問をやり込んで優先順位の判断がつくようにしておきましょう。
国語は記述問題が苦手な子供にとっては解きやすい内容になっているといえます。ただし、総合知識問題で点数がとれるよう基礎固めしておくことが重要です。
算数はややタイトな試験時間の中で、確実に合格点をとれるようにしておきましょう。平面図形がよく出るので集中的に対策しておくのがよいです。
理科は時事問題を日頃からチェックしておくことをおすすめします。時事と絡めた出題が非常に多いので、意識的に情報を取り入れておいてください。社会は地理の難しさにどう対応するかがひとつのカギになります。また、公民は現代への問題提起となる内容が出題される傾向にあります。日頃から社会のあり方に関心を持っていたいところです。
全体的に難しい問題が解けるかどうかのテストではなく、問題から必要な情報を読み取って解けるかどうかを問う内容となっています。